閑話

おしえて! ケンジャさん!(設定資料です)

本書の設定資料を紹介するページとなっております。読んでも読み飛ばしても、本編に支障は出ませんのでご自由にどうぞ。



◇◆◇◆◇◆◇



 これは在る日の四人のやり取りである。


「集まったようじゃな、では今から座学を始めるぞい」

「質問!」

「どうしたブシドウや」

「参加は自由ですか!」

「ブシドウ! ケンジャさんは忙しい中教えてくださってるんだから参加しなさい、当たり前でしょ!」

「ほっほっ、構わんよ。聞いてもよいし、聞かなくとも良い」

「じゃあ……」

「じゃが、他の二人にはそのぶん遅れを取るじゃろうのう」

「うっ……じゃあ、やっぱり参加します。何見てんだリオン!」

「えぇ……」

「それでは、今日の内容はこちらじゃ」


・六元素について

・メオウェルク国内の地理について

・ディスティニオル歴について


 六元素とは、火、水、木、雷、光、闇からなる魔法を扱う際の属性の種類である。

 それらは色でも表され、赤、青、緑、紫、白、黒となっている。

 さらに、組み合わせによる効果も発見されており、例えば火と木ならば風が起こり、水と雷ならば物を浮遊させたり飛ばす効果が現れる。

 ただしそれらは同時に属性を操る行為であり、通常訓練を受けていないものは扱えないばかりか暴発の危険性もある。


「ケンジャさん」

「どうした、リオンや」

「光の魔法って、ケンジャさんは使えますか?」

「ふむ、儂は……使えんのう。あれは少し特別での、闇と同じように誰それが使える属性では無いんじゃ」

「それはなんで?」

「ブシドウ、敬語を使いなさい」

「はて、何故かのう。儂のお師さんなら分かるかもしれんのう」

「なんかはぐらかされた気がする……」


 メオウェルク国内には、街が複数あり、多くの村が存在している。

 大きく分けて、東南にタンジョウ、西にハヴェアゴッド、中心にリングリー、北東にスバルブ、北西にロントの五つ。

 中心にあるリングリーから最も遠いのはハヴェアゴッドで、その次にスバルブ、次にタンジョウ、ロントとなっている。

 リングリーとタンジョウの間にはノースヴァルトという森があり、一応街道が通ってはいる。しかし、亜人種の魔物が出没するので商人の馬車はまず通らない。

 さらにタンジョウの南西にはサウスヴァルトという巨大な森が大きく横に広がっており、年々規模を増やし続け、中からはぐれた魔物が国内で繁殖はんしょくする動きもまれにある。

 ハヴェアゴッドは周りが山に囲まれており、秘境ひきょうのような立地となっている。此処に街が建てられた理由としては、西の国であるペリシュドとの交易こうえきのためだったが、今となってはただ孤立する街である。


「ケンジャさん、ハヴェアゴッドってここからどれくらい遠いんですか?」

「そうじゃのう、馬車で一ヶ月ほどかのう」

「いっかげつ……って遠いのか?」

「太陽が昇って落ちたら、次は神の目が上がるじゃろ? それも落ちたらまた太陽が昇る。人々はそれを一日とし、七日経てば一週間と呼称し、四週間経てば一ヶ月としているんじゃ」

「えーっと……」

「ブシドウ、頭から湯気ゆげが出てるわよ」

「ほっほっほっ、難しすぎたかのう!」

「ケンジャさん」

「どうした、リオンや」

「馬車で一ヶ月もかかるハヴェアゴッドは、へんきょうの街なんですか?」

「ふむ、辺境というと、どこを基準にするかによって認識が変わるかものう。それでも、最も王都から離れておるから、辺境と言えるやもしれぬ」

「なるほど……」


 ディスティニオル歴とは、人が時間の定義を定めた年からかぞえた今日こんにちに至るまでの年数である。

 先程の会話でもあったが、太陽が沈んで再び昇るまでを一日、それを七日で一週間、四週間で一ヶ月となり、さらに十二ヶ月が経つことで一年としてディスティニオル歴に刻まれるのである。

 さらに、三ヶ月ごとに熱帯期から温暖期、温暖期から寒冷期、寒冷期から温暖期と繰り返していき、それもまた一年を象徴しょうちょうするものであり、季節と呼称されている。


「俺、寒冷期大っ嫌いだわ。服もごわごわしたもの着させられるし」

「貴方はそもそも寒がりだから、着させられるじゃなくて着たがる、でしょ」

「そ、そんなことないやい! リオンはどうなのさ!」

「俺は……別にどっちでも。暑いのも寒いのも好きだよ」

「すかしやがって!」

「ブシドウ!」

「ほっほっ、やっぱり子供は元気じゃのう」

「ケンジャさんはどちらが好きですか?」

「儂か。ふむ……暖かい方がいいのう」

「教会に来る爺さんとかも、常に日なたぼっこしてるよな」

「そうね、でも私も好きよ、日なたぼっこ」

「え、ああ、俺もだったわ」

「……」


 ケンジャの座学はまだまだ続くのであった。

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