夏、風をまち、秋、空をはむ。
しののめ
第1章
第1章 第1話
闇。見渡す限りの闇。闇。闇。闇。
漂うぼくは心地よく闇を纏い、闇に溶け、闇に散っていく。嫋やかにぼくと混じっていく。
刹那、白い光。
闇を、ぼくを、洗い流して去っていく。
この先を、ぼくは知っている。
この先は。。。
「ピピピピピピ」
夏。朝。アラームの音。ぼくは枕元に手を伸ばした。まぶたを透過する光が鬱陶しい。
「おはようございます。今日は、8月17日。今日の天気は、、、、」
時計が感情のない声で読み上げる。
また設定切り忘れた、とぼんやりと考えながら、ぼくは枕を抱き寄せ、顔を埋めた。ほのかに残った、心地よさだけを頼りに、ベッドに体を沈める。
「、、消費Co2、電気量、共に規定範、、、」
段々と無機質な声が遠のいていく。世界が、思考が、枕との間の闇に溶けていった。誰もいない、くらく温かい闇の中で、自分ぼやけて、散って、浮かんで、沈んでいく。時は緩やかに流れ、次第に静止しはじめた。すべてがあたたかく漂っていく。
そんなぼくを責めるように、再び、アラームの音が鳴り響いた。
「近々、日本AI研究所のーー博士が、新型AIを発表するとの、、」
時計はまだニュースを読み上げていた。無理やり現実に打ち上げられた頭で、ぼくは、沈みゆく体を引き戻そうともがいた。時計は、無慈悲に時を刻み続けている。何度あらがっても、電子音に連れ戻される。そうわかっていても、、、
数回に及ぶ格闘の末、ついにぼくのからだは、声にならない言葉をあげ、ベットからおりた。
学校に行く時間だ。
「行ってきます」
答える声は聞こえない。
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