第2話 佐々木君、告白する
「・・・見守るとか言ってたのにねぇ。」
「だってさぁ、見ててじれってぇんだよ!」
翌朝、伸は茜のクラスに来ていた。
冬也とはなんとなく顔を合わせずらいので、避難のためだ。
しかし昨日からの冬也へのイライラは治まってない様子だった。
「でも、どうなるんだろうね?二人の関係。」
「まぁ、あいつから告白するのが一番うまくいく気がするんだよなぁ・・・」
「そんなこと言って、もし上手く行かなかったらどうする気よ?」
「いっそオレと仲のいい女の子たちから一人ぐらい紹介してやるよ・・・」
伸はちょっとやけくそ気味に言った。
「仲のいい・・・女の子たち・・・?」
茜の表情が笑ったまま固まる。「あ、いや、その・・・」
伸が「しまった」と言わんばかりの表情をするがもう遅い。
伸は焦りながら弁解しようとするが、
「へーえ、そうなんですかぁ。」
茜の表情がどんどん笑顔になってゆく。
「あ、いや、違うんだよ、ほら、友達として・・・」
「ふーん、そうですかー」
「い、いや、あの・・・」
「ところで結城君、今日の放課後空いてるかな~?」
「いや、今日は予定があって・・・」
「・・・空いてるよね?」そう言って茜は伸の肩を掴む。「いや、だから・・・」
「空いてるよな?」
「はい、空いております。」
「よろしい。」
そう言って茜は伸の手を離す。
「じゃ、放課後に校門前で待っててね。」
「・・・はい。」
(ああ、終わったな・・・)
伸はガックリとうなだれながら教室へと戻っていった・・・
一方そのころこちらの教室では、冬也が教室で思案を巡らせていた。
(どうしたものか・・・)
冬也は自分の席に座っている莉緒を眺めている。
(そもそも彼女と何を話せばいいのか分からん・・・)
(それに俺が話しかけたらまた怯えさせてしまうかもしれない)
(ううむ・・・)
そんなことを思い悩んでいると、莉緒が冬也の視線に気付いた。
(あれ?なんだろ?)
莉緒は不思議に思って冬也の方を見る。
「・・・っ?!」
冬也は思わず目を逸らす。
(うわぁ、なんか恥ずかしいなぁ)
そんな冬也の様子を見て、莉緒も顔を赤らめる。
(ううむ・・・)
そして二人ともお互いを意識し始めたのであった。
そんな莉緒に友人の一人が声を掛ける。
「ねぇあんた、佐々木君の事怒らせた?」「え?!」
「なんかさぁ・・・あんたの事めっちゃ睨んでるけど・・・」
「え?!ど、どうして?!」
莉緒は驚いて声を上げる。「いや、あたしにも分かんないんだけど。」
「まぁ、とりあえず謝った方がいいんじゃない?このままだと気まずいし。」
「うん、そうだね。」
そういって冬也に近づこうとすると・・・
「ダメだよ。訳も分からず謝っちゃ、余計に怒らせるだけでしょ。」
ともう一人の友人がたしなめる。
「でも、このままだったらもっと気まずくなるよ。」
「それはそうだけど・・・」
「とにかく佐々木君は理由なく怒るタイプじゃないし、今謝るのはダメだよ」
「そんなこと言ったって・・・」莉緒は考え込む。
莉緒だってよく分からない理由で冬也からは嫌われたくない。
そんなやり取りをしていると、
「おーい、ホームルーム始めるぞ!」と担任の教師が入ってくる。
「あ、やば!」
「ほら、先生来たから座ろう!」
「と、とにかく佐々木君は感情だけで動かないと思うから、
落ち着いたら理由を聞いてみようよ!」
そう言って二人は慌てて自分の席に戻る。
しかし彼女たちは知らなかった。
冬也が莉緒の事を見ていたのが決してそんな理由でないことを。
そして今の冬也ががっつり感情で動いているという事も。
(今日この教室で彼女に気持ちを伝えてしまうのは、いくら何でも考えなしだし、
俺も恥ずかしい・・・そして何より彼女に失礼だ。)
冬也は告白のタイミングを考える。
(そうだ!もっと時と場所を考えて、最良のタイミングを設定し、
そこで彼女に気持ちを伝えるのはどうだろうか?)
感情に支配されながらも、脳のまだ冷静な部分をフルに使い、
最適解を導いていく・・・。
彼は早速告白するのに最良な日時と場所を考え、詰めていった。
(さて、次はこの最良な日時をどのようにして彼女に伝えるのかだが・・・)
次は伝える手段について考える。
(メール?SNS?メッセンジャー?・・・いやそれではダメだ。
やはりここはひとつ自分の手で書いた・・・「手紙」でいこう!)
・・・今の彼は何処まで行っても残念だった。
そして隣の席にいた伸に向かい、
「ありがとう!お前のお陰で前に進むことが出来そうだ!」
と礼を言った。
「お、おう・・・」
浮かれている冬也に伸は若干ドン引いている。
(告白だけでここまで盛り上がれるのはむしろ羨ましいよな・・・)
伸はしみじみと思った。
その日の夕方、文具店でウキウキとレターセットを買う冬也の姿があったという。
****
翌朝、冬也は30分も早く家を出た。
その手には封筒がしたためられている。
(ふふふ、昨日何度も推敲に推敲を重ねた手紙だ・・・
大丈夫だ。きっと上手くいく!)
そう自分に言い聞かせながら登校する。
そして教室に入ると莉緒の机に手紙を入れる。その表情はとても晴れやかだった。
(さて、彼女が読んでくれるといいのだが・・・)
手紙を入れたものの、皆が登校するまで時間はまだあるので、
冬也は学食近くの自販機コーナーで時間を潰す。
冷たい缶コーヒーは彼の煮えたぎった情熱と脳を程よくクールダウン・・・
させるわけもなく、彼のテンションを無駄に高めていた。
(さて、そろそろいいかな。)
冬也は時計を確認してから教室へと戻る。
クラスの人間がぼちぼち登校してきていた。
その中には真っ白に燃え尽きている伸もいた・・・。
昨日の放課後から伸と茜がどこで何をしていたのか知る者はいない。
「おはよう・・・」今にも消え入りそうな声で伸は挨拶すると席に着いた。
その様子にさすがの冬也も驚き、一瞬だけ冷静さを取り戻す。
「ど・・・どうしたんだお前!」
「お、オレもう・・・お嫁にいけないかも・・・」
「はぁ?!お前松川さんとあの後どうしたんだ?!」
「うう・・・」
「おい、何があったんだ・・・?」
「違う!何も無かった!ホントだって!」
「じゃあなんでそんな死にそうになってるんだよ!」
「それは・・・」
「何があった?!言え!」
「・・・これ以上オレに恥をかかせないで」「は?」
「お願いだから察してくれよぉ~」
(な・・・何されたんだよ・・・)
冬也はドン引きしながら、それ以上聞くのをやめた。
****
そして昼休み。
「う、うう・・・お前怖い。」
「・・・とか言いつつしっかり弁当取りに来てるじゃない。」
・・・なんだかんだで伸は茜の弁当を貰いに屋上に来ていた。
「う、ううう、オレの欲望優先順位、未だに食欲が1位なのが恨めしい・・・」
伸は泣きながら弁当を食べる。
「それよりさ、佐々木のやつ、遂に告るの?」
「うん、本人はやる気満々だよ。」
「そっか・・・」
「ん?何か問題でも?」
「いや・・・皆川ちゃんと佐々木って両想いなんだよね?」
「ああ、だからあいつから告れば、まず上手く行くだろうよ。」
「・・・それなんだけどさ」
茜はなにやら困った顔をしている。
「・・・あのさ、皆川ちゃんっていつもの冷静沈着な佐々木に惚れてるわけだよね?」
「どういう事だ?」
「あの残念モードな佐々木を知ったらどうなるのかなって・・・」
伸は茜の話を聞いて、しばし固まった後、
「・・・・・あ!ああ・・・ああああ!!!」
ようやく正常に動き出した頭でゆっくりと状況を理解した。
そう、今の冬也は残念なのだ。
それもかなり重度の。
「・・・思い切り幻滅されて、付き合うどころか軽蔑されるかもしれないよ」
茜がため息を吐く。
「いや、それ以前に、今の状態のあいつがどんな告白をするんだ?
まったく予想ができない・・・そっちも怖い。」「確かにね・・・」
「そもそも告白の仕方なんて分かるのか?あいつ。」
「・・・分からないと思う」
突如湧き出した事態に、伸たちは頭を抱えた。
***
そして渦中の莉緒は、机の中の手紙を発見し、そっと開く。
そこには丁寧に書かれたきれいな文字で
『〇〇月××日16時第二図書館前公園で待つ。』
(は・・・果たし状?!)
莉緒は思わず手紙を落としそうになるが、何とか持ちこたえる。
(な・・・名前すら書いてないんだけど)
「どうしたの莉緒?なにか来たの?」
「う、ううん何でもない」
莉緒は慌てて手紙を隠す。
(こ、これは・・・行った方がいいのかな?)
莉緒はしばらく悩んでいた。
***
翌日。
冬也はそわそわしていた。
(いよいよ、今日の16時だ・・・)
何度も何度もスマホの時間を確認する。
(大丈夫だ。昨晩何度もシミュレーションをしたじゃないか。)
自分に言い聞かせるが、やはり不安が押し寄せてくる。
その様子を見た伸は(今日告白すると一発で分かるあたりがな・・・)
とその痛々しさに呆れ果てていた。
とはいえど親友がこっぴどい振られ方をする可能性が高いことを
見過ごすわけにもいかない。「佐々木、ちょっといい?」
「お、おう。何だ?」
「そのさ、もし上手く行かなかった場合の事なんだけどさ・・・」
「いや、皆まで言うな。」「は?」
「・・・俺は決めたんだ。俺にとってどんなにひどい結果になっても、
彼女の事は決して恨んだり、嫌ったりしないって。」
「・・・・!」伸は一瞬黙る。
「それにそんな結果になることを恐れたいたら告白なんてできないからな。」
「佐々木・・・お前そこまで覚悟してたんだな。」
「まぁな。」
冬也は自信たっぷりに胸を張る。
「分かった。お前の気持ちはよくわかった。オレはお前を応援するぜ!」
「ありがとう。」
「ところでさ、一つ聞きたいんだけど、まさか手紙に名前書き忘れたとかないよね?」
「・・・!・・・あぁぁ!」
冬也の顔がみるみると青ざめていく。
「お、おいおい、ここまで来てそれかよ・・・」
伸を呆れを通り越した何かが襲う。
「ど、どうしよう・・・」
「あーもう!とりあえず行ってこい!・・・ひょっとしたら来てくれるかもしれない。」
伸はめまいを覚えるが、無理矢理彼の背中を押した。
***
そして放課後。
「ここに来てそんなことになるなんて、バカなのあいつ?!」
呆れ果てる茜に伸は「少なくとも今は・・・」と返す。
いち早く第二公園に向かった冬也に続き、伸たちも向かう。
「・・・のぞき見ってちょっと悪趣味が過ぎない?」と茜に言われるも、
「・・・と言うか骨を拾ってやる意味合いの方が濃いかもしれない。」
と答える。
それぐらい伸には望み薄に感じられていた。
やがて、公園の入り口が見えてきた。
冬也はすでに到着しているようで、ベンチに座っているのが見える。
「佐々木は?」「あ、あそこにいるな。オレらはここで待機するぞ。」「了解。」
そして、ついにその時が来た。
「そろそろ4時だけど・・・来た?」「いや・・・まだかな?」
そもそも来るかどうかも怪しい。そう思っていた二人だが、
冬也に向かって歩いていく人物の姿が見えた。
「お!おおお!・・・むがむがむがっ・・・」「静かに。」
伸は途中から口をふさがれる。
やがて、冬也の方も自分に向かって歩いてくる人物を視界にとらえた。
「・・・・!」
冬也は緊張のあまり立ち上がる。
そこに現れたのは・・・莉緒だった。
(き・・・来てくれた!)
「あの・・・」
「え、ああ、あの」
お互い言葉に詰まる。
「あの、手紙をくれたのはあなたですか?」「はい。」
「それで・・ご用件は・・・」「そ、そそそれは・・・ですね。」
莉緒まで緊張してしまっている。
「かぁ~!初々しいねぇ・・・」茜が思わず小声で口に出す。
ここで伸が無理やり茜の手を口から引きはがす。「ぷはっ!はぁ、はぁ・・・」
「悪い。つい力が入った。」
「いいけどさ・・・はぁ、はぁ」
二人のやりとりなどつゆ知らず、冬也は莉緒の質問に答えようとするが、
頭が真っ白になって何も思いつかない。
(ど、どうすればいい?!)
そうこうしているうちに莉緒が再び口を開く。
「あの、私に何か御用でしょうか?」
(まずい、このままではまた逃げてしまう!)
冬也は意を決して莉緒の目を見る。
「皆川さん!」「はい?」
(言え!言うんだ俺・・・!)
手の震えが止まらない。
「お、俺・・・あなたをずっと見ていました。」
「はぁ・・・?」
(落ち着け・・・落ち着け俺・・・)
「こ、こんなこと言うなんて・・・変かもしれませんが・・・
俺、ずっと貴方をス・・・素敵だと思っていました。」
思わず声が上ずる。
「・・・・・!」
莉緒は真っ赤になり目を丸くしていた。
「でも今の今まで、俺はそんな気持ちを・・・自分の奥底に隠してきました。」
(よし!口調だけでもなんとか冷静さを取り戻せた!)
「でも、このまま言い出すことなく、あなたに隠し続けるのは・・・納得がいきませんでした。」
そして冬也は大きく深呼吸すると、最後の一言を言った。
「つまり・・・俺は・・・あなたが好きだという事です!!」
言い切った瞬間、冬也の心臓の鼓動は最高潮に達する。
「ふぇ?!」
その勢いに押されて、莉緒は可愛らしい悲鳴を上げる。
「だからその、これからはもっとあなたの事を知りたいんです!」
冬也は必死に思いを告げようと言葉を紡ぐ。
「えっと、あの・・・」
「もちろん今すぐ返事を聞かせて欲しいとは思っていません。
ただ、少しだけ考えてみてもらえないでしょうか?」
「えっと、その・・・」
「あ、すみません。こんな事、いきなり言ってしまって・・・」
「あ、いえ、そういうわけじゃなくてですね・・・」
「そ、それでは失礼します!」
「あ、待ってくださ・・・」
莉緒の言葉を待たずに、冬也は走り去ろうとするが、足がすくんで動けない・・・。
(クソ・・・こんな時も俺は・・・!)
冬也は自分自身にもどかしさを感じていた。
「佐々木さん・・今の発言、本気・・・なんですよね。」
「じょ、冗談で俺はこんなこと言えるほど、器用じゃない・・・です!」
冬也は恥ずかしくなって顔を背ける。
その様子を見て、莉緒は赤くなりながらもくすりと笑い、
「良かった・・・あなたは私の思っていた通りの人でした。」
「え?」
冬也は驚いて顔を上げ、彼女の目を見つめる。
「実は私も、あなたのことを見ていたんです。」
「そ、それはどういう・・・?!」
予想してなかった返しに冬也は戸惑う。
「私も・・・あなたが好きなんです!・・・どっちのあなたも。」
莉緒は冬也の視線をしっかりと受け止める。
「そ、それじゃあ!」
「はい。お友達から始めましょう。」
そして二人は握手を交わす。
「ありがとうございます。本当に嬉しいです!」
「私の方こそ・・・よろしくお願いします。」
こうして二人の交際が始まったのだった。
***
「あーあ、行っちゃった。」
茜はベンチに腰掛けながら伸びをする。
「ま、結果オーライというか・・・でもこれで一件落着だろ。」
伸もほっと一息ついた。
「さて、帰ろうぜ。」
「待ってもう一つ解決してない!」
「残念モードか・・・」
「皆川ちゃんは残念な佐々木を知ってるのかな・・・」
クラスの大半が認識してるのが冷静沈着な秀才な冬也だ。
「・・・佐々木のやつも落ち着けばだんだん冷静になってくんじゃねーの?」
「そうだといいんだけどさぁ・・・」楽天的な伸に対して茜が心配そうに言う。
「大丈夫だって。ほら、行くぞ。」
「ああ、うん。」
そして、伸は茜の手を引いて、校舎に向かって歩き出した。
****
その後、二人の交際は順調だった。
「おはよう、冬也ちゃん!」
「・・・お願いだから『冬也ちゃん』はやめてくれないか?」
「え~?どうして?」
莉緒が楽しそうに聞き返す。
「どうしてもこうしても・・・なんか恥ずかしいだろ。」
「ふふっ。耳まで真っ赤だよ。」
莉緒には勝てる気がしない。
「お前はずるいよな・・・」
冬也は自分の弱さを実感していた。
「何が?」
「いや、何でもない。気にするな。」
「ん。わかった!」
(無邪気だな・・・)
莉緒は時々子供っぽいところがある。
「・・・あの子、あれで結構マイペースだったんだな」
伸が驚いたように言う。「皆川ちゃんは前からあんな感じだよ。」
茜が言う。敬語だったのはやはり緊張していたからだったようだ。
「へぇ、意外だな。もっとしっかりした人かと思ってた。」
「そうなんだよねぇ。最初はみんな驚くんだよね。」
「なるほどなぁ。」
「ま、佐々木の方もあんたの言う通り残念さは薄まったね。」「だろう?」
伸は得意げに答える。
「でもちょっと変わったかも。前よりは明るくなったっていうか。」
「確かに前はクール系だったけど、最近はよく笑うようになったな。」
「うん。あたしもそれは思った。」
「そっか。なら良かった。」
伸は安心して笑顔になる。
昼休み。
この頃になると4人で屋上で昼食をとるのが習慣になっていた。
「そういやさ、皆川ちゃん、前から佐々木のこと好きって言ってたけど、
どういうところが好きだったわけ?」
茜が弁当をつつきながら突然そんなことを聞いてくる。
「ちょ、いきなり何を・・・!」
冬也が慌てて止めるが莉緒は平然と答える。
「そうだなぁ・・・前に立川さんを見てて目の前の池に落ちたり・・・」
「・・・?!」
冬也は言葉を失う。
「あとはね、野村さんハンカチが風に飛ばされたとき取ってあげようとして
まだ乾いてないコンクリートに思い切り足跡つけた時とか・・・」
「・・・?!?!」
「あー、あったねー。」
伸は苦笑いしている。
(つまり全部残念モードのときじゃん・・・)
冬也は恥ずかしくて死にそうになる。
「他にもいっぱいあるんだけどねー」
莉緒が嬉々として語る。
「もういい!勘弁してくれ!俺のライフはゼロだ!」
冬也は顔を真っ赤にして莉緒を止める。
「えー、まだまだ話したいことが沢山あるのにぃ・・・」
莉緒は不満そうに頬を膨らませる。
「・・・つまり皆川ちゃんは残念な佐々木も好きだったわけね。」
「そういうことになるかな。」
「あはは、そりゃあ良かった。」
伸たちは自分らの心配が杞憂に終わったことにようやく安心する。
「・・・お前ら二人で納得してんじゃない!」
冬也は疲れ果てていた。「まあまあ、落ち着きなって。」
茜がなだめるように言う。
「まったく・・・」
「でも、今の冬也ちゃんも私は好きだよ。」
莉緒が優しく微笑む。
「そ、それはどうも・・・」
冬也はこの後も莉緒に調子を狂わさる日々を送った。
でもそれはきっと幸せな日々なのだろう。
おわり
佐々木君は恋愛が絡むとIQが著しく下がる 梅玉 @Take2036
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