第23話 魔なる力

 リーネはアシュレイの背後に回り込むように移動して、躱しづらい胴を狙って横薙ぎに斬り伏せる。

だがその攻撃をやすやすと魔剣で受け止めるマガマガシイモノ。聖剣と魔剣がぶつかり青白い火花を散らす。


”あいっでぇぇぇぇぇ”


 魔剣との接触は俺の身体に激痛を与える。

相反する対極の剣同士のせいか接触するとスキルがうまく発動しない。

 そんな俺の情けない叫び声が聞こえてもいないように、リーネは足を止めて凄まじい速度で連撃を繰り出す。その悉くを魔剣で受けられ火花を散らす。その都度俺の身体に激痛が走りまくる。

 マガマガシイモノが剣ではなく腕を伸ばしてしならせてリーネを狙う。

それを見越していたリーネはその攻撃を掻い潜り、足を斬り捨てにかかろうとしたがその足をも鞭のようにしならせてカウンターを取りに来ていた。

 これにはさすがのリーネも反応できず直撃を食らう。俺はリーネの身体を庇うように割り込み、またしても壁に激突しかけるリーネの背後にユリエを射出する。

スライムのユリエは壁にぶつかって大きく広がり、吹っ飛んできたリーネをぼよんと抱きとめる。


「すまぬ、助かったぞ、ユリエ」


リーネは地面に降り、すでに何度目かの攻防の仕切り直しになっていた。


”埒が明かないな”


 俺は魔剣との衝突の痛みでのたうち回りたいのをやせ我慢しながらそうぼやく。


「まったくじゃ。動きが変則すぎて攻撃が当たらぬ。お主のせいで魔力を使った攻撃はできんし……」


”ん??そんな話は初めて聞いたぞ?”


「そらそうじゃ。今まではこの剣技だけでも十分戦えてきたからな。魔力系の攻撃なんぞ必要なかったわい」


……なるほど、そう言われればそうだった。


”ステータス”


俺はステータスを開き、3度スワイプする。

するとリーネのステータスが表示された。

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レベル:   62

なまえ:りーね

ねんれい:123

しゅぞく:まぞく

しょくぎょう:せいけんのつかいて

HP 082999/142586

MP 158954/185647


ちから :    125 +10000

ちりょく:    468 +10000

まりょく:   5865 +10000

すばやさ:   122 +10000

きようさ:   125 +10000

みりょく:   9999 +10000

すたみな:   100 +10000

じょうたい:きょうかふよちゅう

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スキル

【魔力操作】×

【魔力放出】×

【魔力増幅】×

【剣術・真極】☆

【神速抜刀】☆

【空断一閃】☆

【無刀剣術・改】☆

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確かにリーネ自身のスキルが使用できなくなってるな。

……今まで確認しなかった自分の浅はかさに呆れつつ一つひらめく。

 【技能貸借】のスキルを使ってリーナネのスキルを俺が借りれば……と考えた時ピコーンといつもの音が聞こえ


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【技能貸借】のスキル効果により

リーネ・バルバリアより以下のスキルを借用しました。

【魔力操作】

【魔力放出】

【魔力増幅】

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……仕事が早い。


”リーネ、魔力を使った攻撃、俺を介してできないか?”


 目の前でマガマガシイモノの両手がパカリとふたつに裂ける。そのままグニャリと伸ばして4本の鞭のように振り回して攻撃してくる。それを素早く回避しながら


「この忙しい時に難しい話をするなっ!!」


 リーネは飛び回りながら回避し、時に剣で受けて攻撃の瞬間を狙う。


「ええいっ!!面倒じゃっ!!」


 リーネは大きく跳びあがって剣を振り空を斬る。

その剣閃は衝撃波となってマガマガシイモノの鞭のような腕の1本を切断する。

千切れた腕は暴れるミミズのように明後日の方向へ飛んで行ったが、空中で器用に方向転換してそのままリーネに向かって飛んでくる。


 その一瞬の隙を付いて着地と同時にリーネが集中する。

俺の全身に不快なエネルギーが流れ込んでくる。


ぐぐぐっ……これはっ……きもぢわるい……


 ぐっと堪えて耐える。

流れてきたエネルギーはそのまま燃焼されるように炎へと転じた。

俺の全身に炎が纏われる。


「おお、使えたぞ。……熱くないのか?」


”お気遣い感謝。気分はよくないが熱くはない”


「よし!! では行くぞっ!!」


 切断された腕が踊るように襲い掛かってくる。リーネは剣で正面に円を描くように剣を振って炎の円を描く。

円の炎は消えることなく、そのままぐるぐると回り始めて襲い来る腕を巻き込み燃やし斬る。

炎が拡散した時、腕の残骸がぼとぼとと消し炭となって転がった。


 今一度、マガマガシイモノと対峙する。

見ると切断した腕の部分からたくさんの触手のような物が生えだしている。


「……斬っても斬っても終わりそうもないのぅ」


”燃えカスは再生していない。全部焼き尽くせばいいんじゃねーかな?”


「よし!!その案に乗ったぞ」


リーネは剣を構えて集中を始める。

俺の身体にまた不愉快なエネルギーが注ぎ込まれる。


”ぐおおおおぉぉぉぉ……”


今度は我慢できずに声が漏れる。

集中で動けぬリーネを狙ってマガマガシイモノが勢いよく突進してくる。


”ちっ”


 リーネは集中していて動けない。

凄まじい勢いで突進してきたマガマガシイモノの身体があと1mに近づいた時、地面から青いゼリー状の壁が出現し、マガマガシイモノの突進を吸収、捕獲する。


”ナイスだ!!ユリエ”


スライムのユリエに阻まれ、マガマガシイモノが暴れて拘束を引きちぎろうとしているが、粘膜に絡み取られて動けないようだ。


「よくやったぞ、ユリエ。逃れよっ!!」


リーネが目を開き剣を掲げる。一気に魔力が俺の身体に流れて爆発するような感覚を受ける。


”ぐあああああああああぁぁぁぁぁ”


「うるさいっ!!我慢せい!!」


 リーネが叫び、俺の身体の中に魔力が蓄積され一気に膨張するのが分かる。

そのまま剣を引き、突きの構えを取って一気にマガマガシイモノに突き刺す。

そして


「爆炎天衝」


 リーネの言葉で俺の中の魔力が一気に爆発と炎に変化し放出される。

マガマガシイモノは内側から炎が爆発し噴き出す。

その威力で戦闘場所だった時計塔の壁や天井をも吹き飛ばした。




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