第17話 でっかい仕事
「それでは合格、おめでとうございます!こちらがギルド証。バイナリィさんの推薦がありましたのでC級からのスタートとなります」
受付嬢がにこやかにそう告げてギルド証となるカードを手渡してくれる。
戦う気満々だったリーネは肩透かしを食らったせいでずっと悶々とした顔をしていた。
「がははははは、お嬢ちゃん晴れて冒険者となったわけだ。おめでとう。ところでこの後暇かい?」
豪快な声がリーネの後ろから声をかけてきた。当然試験官を務めていたバイナリィである。リーネは振り返り、不満そうなジト目で声の主を睨んだ。
「がはははは、可愛い女の子にそんな目で睨まれるのはあまりうれしくないな!!」
”やかましい男だな”
「まったくじゃ」
「ん?まぁそう警戒しなさんな。試合できなくて消化不良なんだろ?大きな仕事があってな。新人とはいえ俺より強そうなお嬢ちゃんなら一緒にきてもらえねーかと思ってよ」
リーネはぷいっと顔を横に向け
「おこと…‥」
”リーネ!!”
「……わりをしようかとも思ったのじゃがこれも何かの縁、話だけは聞こうかの」
「ん??あ、ああそりゃあ助かるぜ。がははははは」
リーネはうんざりした顔をした。
「うぐっ。ガツガツ。これもなかなか・・・・ムシャムシャ」
バイナリィに連れられてギルドの隣にある飯屋へと移動する。
驕りだというのでリーネは遠慮なくテキトーに4,5人前もってこいという注文をして店員とバイナリィを驚かせた。
そして届いた料理を片っ端から口に入れて噛み砕き、飲み干している最中であった。
”もうちっとお上品に食えんのか?”
「……すげー食欲だな。お嬢ちゃんほんとに人間か?」
さすがに呆れたバイナリィの一言に一瞬手が止まったリーネだったがまたガツガツと食べ始める。
届いた料理を粗方一人で胃袋に収め、満足げな顔で椅子に深く座ったリーネが
「うむ、満足じゃ。バイナリィとやら、わしゃお前のことが気に入ったぞ。いい奴じゃな」
「……あ、ああそれはなによりだ。しかし……すごいな」
食い散らかされたテーブルの残場にバイナリィは言葉を失わずにはいられなかった。よくわかる心境だな。
”リーネ話を進めてくれ”
リーネはコクリと頷き
「では話を聞こうかの。良い儲け話と聞いたが?」
「ああ、そうだな」
バイナリィは真顔になって話を始める。
「実はこの街と都市国家バシュアナを繋ぐ街道の途中にドラゴンが出現して困っているらしいんだ。そのドラゴン討伐の依頼がこの街の商会連合から出た。危険度はA、報酬は金貨六千枚。千枚クラスの大仕事だ」
金貨の価値は相当だ。今回船に乗るのにも金貨で十枚必要になる。
かなり大きな仕事ということになる。
危険度がどれくらいかよくわからなかった……
「おお!!ドラゴンか!ありゃあ美味いんじゃぞ!!」
リーネが嬉しそうに目を輝かせる。その顔をみてバイナリィが眉をしかめる。
「いや、ドラゴンなんて食わねーだろ。というかどこかでドラゴン討伐に参加したのか?」
”一度食ったもんなぁ。倒すのに苦労はしたが……”
俺は直近の最果ての地での激闘を思い出す。
リーネと俺なら危なげなくドラゴンを討伐できるだろう。
二人でやれば六千枚となると一人三……と考えていると
「ま、まあいいや。討伐経験者なら話がはえー。すでに百人規模の冒険者を募ってる。これだけいればドラゴンとは言え死者を出さずに討伐できるだろうって話だ」
百人???えーと1人頭、金貨六十枚か。
旨味は減るが当初の目標には十分だし今後の軍資金としてもいい感じだ。
”リーネこの仕事受け……”
ダン!!と机を叩き勢いよく立ち上がったリーネが
「100人じゃと???たかがドラゴンにか?アホらしいわい。えーと六千枚、二人で行けば……」
”3千枚”
「3千枚の大儲けじゃろうが!!えーと……」
”バイナリィさんだ”
「そうじゃ!!バイナリィサン!わしゃと二人でドラゴン討伐に向かうのじゃ!!」
リーネは力強くそう言い放った。
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