第2話 青い空、異世界そして……
青い空が見える。
なんとも綺麗な空だ。
俺はそんな空を見ながら、もう何十年もこんな青い空を見上げた記憶がないことを思いだす。
ここ最近、見上げた空はいつも夜だった。
そんなことを思い出しながら、なんで俺は青空の下、地面に寝転がっているのかを考えた。
……どうも記憶が曖昧だ。
そうだ、風呂。
いや、なんか役所に行って……
違う、異世界転生。そうだ俺は異世界転生をしたのだ。
ピタリと現状を理解して俺は上半身だけ飛び起きる。
そこは見渡す限り草しかないただっぴろい草原だった。
みたこともないほどただただ草の生い茂った広い場所。どこにもビルも家も見当たらない。
「ここが異世界か」
まるで夢でも見ているようだった。
いや、頬を撫でる風の感触、鼻腔をくすぐる、お日様と草の匂い。
ここが現実だと感じるには十分な感覚で会った。
感動的な雰囲気に身体の頭からつま先まで電流が走るような感覚に捕らわれる。
そしてひらめく。
「異世界といえば」
いつものように俺は独り呟いてこみあげる喜びを表情に出しながら
「ステータス!!オープン!」
そう叫ぶと目の前にゲームでよく見るステータス表が表示される。
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レベル: 1
なまえ:けんと
ねんれい:17
しゅぞく:にんげん
しょくぎょう:なし
HP 9999999999999/9999999999999
MP 9999999999999/9999999999999
ちから : 99999
ちりょく: 99999
まりょく: 99999
すばやさ: 99999
きようさ: 99999
みりょく: 99999
すたみな: 99999
じょうたい:けんこう
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「おお、すでに数値はすべてカンスト。これが異世界チートか。神様ありがとう」
神様になんて遭った記憶もないが一応感謝を口にする。
こうなると当然アレもあるんだろう?
俺は目の前に見えるステータス表をスマホを操作する感覚でスッと左へスワイプさせる。
「うん、やはりな」
目の前のステータス表が左へ移動して「アイテムBOX」に切り替わった。
「ん?……きびダンゴ?」
アイテム欄には「きびダンゴ」のみが書かれていた。
とりあえず取り出してみるか。俺はおもむろに空に手を伸ばす。
するとポンと何かが弾ける音がして手には小さな小袋が握られていた。
中身を確認する。
「……吉備団子だな」
一口では頬張れなさそうもないほどの大きな吉備団子が一つ入っていた。
「これは食べる……いや、当然アレだろうなぁ」
吉備団子とくればアレを連想しない日本人はいないだろう。
「……とすると、やはりアレを探さないとな」
俺は辺りを見渡し、この状況なら必ず遭遇するであろうお約束のモンスターを探す。
すると草むらがゴソゴソと動き青く丸い物体の一部が見え隠れしているのを発見する。
「フッ、やはりいるなぁ」
思わず笑いが込み上げてきた。
俺はゆっくりとガサガサと動く草むらへと近づく。
そこには青く丸い球体、スライムがぴょこぴょこと飛び跳ねていた。
「定番だよなぁ」
ベタベタな展開にやや呆れた笑いを浮かべながら当然こういう時は当然
「ほら食え。そしてお前は最初の仲間だ」
俺はスライムの近くにしゃがみ込み手に持ったきびダンゴをスライムの前に差し出す。
ぴょこぴょこ跳ねていただけのスライムは俺の差し出したきびダンゴに反応するように動きを止め、しばらく停止していたがビョコリと飛び上がると俺の手の上のきびダンゴに向かって落ちてきた。
その瞬間、俺の背筋にゾクリと冷や汗のようなものが滑り落ち、とっさにきびダンゴを置き去りに手を引く。
間一髪であった。落下してくるスライムはまるで獣の口のように変化して勢いよく俺の手があった位置に置き去りにされたきびダンゴに食らいついた。
「こ、こわぁ……」
食らったきびダンゴを貪るように動くスライムを見ながら俺は肝を冷やす。
ぐちゃぐちゃと噛み砕くように変化していたスライムがもとのきゅうたいになりおとなしくなった時ピコーン!っとゲームの電子音のようなものが頭の中で鳴り響き
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[スライムをテイムしました]
スキル 【魔物操術】
を取得しました。
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というメッセージが目の前に現れる。
「やはりこうでなくちゃ」
俺は満足げに頷く。
そしてもう一度ステータスを開き目の前の表示を二度スワイプする。
するとステータスからアイテムBOX、そしてスキル一覧へと画面が切り替わった
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スキル
【魔物操術】
ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー
それのみが書かれている。
「ふむ。まだこれだけか。でもまぁこれから増えるだろう」
俺はどんどん強くなる自分を想像してニンマリと笑う。
スキル一覧からもう一度スワイプすると
仲間モンスターの欄に移動した。
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仲間モンスター
スライム
ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー
と書かれている。
俺はスライムの詳細を見る。
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スライム
レベル1
しゅぞく:スライム
HP 9999999999999/9999999999999
MP 9999999999999/9999999999999
ちから : 99999
ちりょく: 99999
まりょく: 99999
すばやさ: 99999
きようさ: 99999
みりょく: 99999
すたみな: 99999
特技
体格変化
吸収
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「な、なんだよこれ。スライムもカンスト??」
俺は驚く。つまり俺がテイムするとステータスがカンストするのかもしれないな。
そんなことを考えてると
スライムは俺に擦り寄ってくる。
「はは、可愛いやつ」
俺はしゃがんでスライムに触れてみた。
冷たいニュルリとした感触。ボヨンとした弾力があり少し粘つく感じは桜餅を思わせた。
フニフニと触っているとスライムの感情が伝わってくる。嬉しそうだ。
「ははっ、よろしくな。相棒。そうだな名前をつけてやらないとな」
俺はスライムの名前を思案する。
スラリン
ありきたりだ。
スラー
短絡的だ。
粘着丸
なかなか良いがイメージが悪い。
色々悩んだ末
「シロとハナのどっちかだな」
俺は散々悩んだ挙句そんな名前に行き着く。
「うーん、間をとってユリエとするか」
シロいハナ=ユリ
という安い発想だったが満足の名だ。
「よろしくな、ユリエ」
青い球体のスライムが表面をブルリと振るわせ喜びを表す。
「ははっなかなか可愛いやつだ」
俺はスライムを持ち上げて立ち上がり
「さてこのあとはやはり街に行って冒険者ギルドだな」
俺はこの先の流れにウキウキしているとゴウッと驚くほどの強風が背中を押す。
「おっと」
凄まじい強風で身体が一瞬宙を舞った。
「え?」
突然のことに驚く。
持っていたスライムが手元から離れる。
まるで全身の毛が逆立つような動きを見せるスライムがヒュンと目の前から消える。
そして俺を覆う暗い影。
地面に足のついた俺が振り返るとそこに大きな黒い山が聳え立っている。
山?いや、違う。光を遮ってるそれは長い首をもたげている。知っているそれは
「ドラゴ……」
その名を呼ぶ前に巨大な顎が開きぐちゃりと俺を飲み込んだ。
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