最強ステータスな俺、死んでは異世界転生を繰り返し、次々とチート能力を手に入れて無双する。~テンプレ欲張りセットな俺の異世界放浪記~
新居部留源
プロローグ 初めての異世界編
第1話 風呂場でひらめき
「そうだ、カクヨムコンに応募しよう」
突然のひらめきに狭い浴槽でゆったりと湯に漬かりながら俺は独り呟いた。
今日は28日の夜。
カクヨムコンの締め切りは31日。
それまでに10万字を書き切らねば応募資格はない。
「ま、なんとかなるだろう」
お気楽な独り言は狭い浴室の中を反響する。
まぁ俺ほどの人間になれば10万字程度の物語を考えるのなんて朝飯前。
そんな自信はいつものことだ。
少し温くなった湯船に身体を鎮め首まで浸かり直し、俺はその至福の環境で心地よい気分になる。
いい思い付きに鼻歌でも歌いたい気分だ。
なんせ俺はもう何年も毎日のようにカクヨムでランキング上位作品を読みまくってる。
そんな俺が書くのだから当然ランキング入りは間違いない。
小説なんて書いたこともないがいつもアイディーアは頭の中に収めてある。
なんてことはないそれをサクサクと放出するだけ。
10万字なんてあっという間、赤子の手をひねるより簡単だ。
「ふふふ。俺も小説家デビューか。今まで俺を馬鹿にしてきた奴ら、なんて言うかな」
毎日毎日働け働けと顔を合わせると小言のように口走るじじぃばばぁと化した両親。
たまに連絡をしてきてキーキーと金切り声を上げてセッキョーする嫁に出た姉貴。
俺を見て気持ち悪いゴミでも見たような顔をするいつも通っているコンビニのあの子。
たまにすれ違っても視界にも入れない古い友人たち。
カクヨムコンに入選し、小説家になったら俺を小馬鹿にした奴らも平身低頭で俺に媚びるに違いない。
「ははっ、人生って案外ラクショーだな」
俺の書いた小説がアニメ化したり映画化したりすることを想像しながら零れ出る笑みを浮かべて俺はざばぁと立ち上がり足を上げて湯船から出る。
栄光の第一歩目を浴槽から踏み出した時、
「あ」
そこには先ほど身体を洗った時、出しっぱなしにしていた石鹼が転がっていた。
まずい、と思った時には俺の足は石鹸を踏み、全体重を乗せていた。
石鹸はツルりと滑って踏みつけた足が天に向かって振り上げられるのを感じた。
そのまま視界に天井が映り、足とは反対の後方へ下がっていく頭部に激痛が走り
俺の視界はブラックアウトした。
「……かくしてお宅の人生は終わりを迎えたわけだが」
目の前の役所で見るようなスーツを着た七三分けでメガネの男が書類に目を通しながらそう俺に話しかけてくる。何を言っているのかよく理解できず
「ハァ……」
と俺は小さく曖昧に頷く。
ーーー何を言ってるんだコイツ。
俺は男の正面で椅子に座っている。いつこんな役所みたいなところにきたんだったか。俺はここに来た経緯を思い出そうと試みるが思考が上手く定まらない。
そんな俺を目の前の男は顔は机の上の書類に向けたままチラリと視線だけを上げて俺を見る。
一瞬目があったが男は気にした風もなくまた書類に視線を戻して、机の上の書類をまとめてトントンと重ねながら立ち上がる。
「……ではご希望通り『異世界転生』ということになりますので」
そういってまとめた書類の一番上にポンと大きな「転移」と書かれた判を押して俺に差し出す。
「はぁ?」
俺は渡された書類を眺めながらおもむろに受け取り、素っ頓狂な返事を返す。
「ではお気をつけて」
男の声と同時に俺の視界はぐにゃりと暗転した。
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