3:狼に成れなくても
子狐は泣いていた。
日が暮れ、少年が立ち去った神宮寺で
暴漢は鐘が鳴るまでヨシアキを蹴り回した。少年たちが立ち去った後、よろよろと立ち上がったヨシアキは、いつもと同じ笑顔でアカネに笑いかけた。
涙が止まらなかった。
何故この体はこんなに小さいのか、何故こんなに痩せ細っていて、何故こんなに軽いのか。
もっと頑丈な爪が、もっと強大な牙が、
しゃん、と。
錫杖の音がした。
「あや、
子狐が顔を上げれば、旅装束の尼僧がいた。
繕いを重ねて色褪せた
余りにも。
人とは思えぬほどに。
尼僧は何故か、数珠に繋いだ金槌を首から下げている。頭の黒錆といい、柄の蜜蝋といい、途方もなく年季の入った金槌であった。
「さて子狐、子狐や、何を泣いておるのですか」
その金槌を
子狐に、である。
恋しい少年に、餌は美味いか。と問われて、こんと鳴いて答えたことはあったが。
是か非かで済まぬようなことを、問いかけられたことなど、
子狐は
有ろうことか、尼僧は子狐の
「
尼僧は拳を握りしめて立ち上がる。
楚々とした唇から、ぎり、と歯の
「アカネや、アカネ。もう嘆くことはありませぬ」
鼻息も荒く、尼僧は言った。
「なるほど確かに、狐は非力。虎の威を借るが
やたら小難しい尼僧の言い回しであったが、子狐には不思議と理解できた。
「されど」
尼僧が笑う。
花の唇から、犬歯が覗く。
「
しゃん、と。
妖しくも神々しく錫杖を鳴らした尼僧は、よいせ、と
「修羅には修羅の、畜生には畜生の戦い方が有るというもの。さあさ、その
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