第154話 披露

 ———文化祭二日目。俺と丹菜は注目を浴びながら登校した。写真のせいもあるが、それだけでは無い。俺の髪のせいだ。昨日、学校から帰ってくるなり、床屋さんに髪を切りに行って来たのだ!


頭軽あたまかるっ!」


 俺の第一声だ。そして隠れる場所を失った俺の顔は、開放感に満ち足りている。見慣れてる筈の丹菜がチラチラ見て含羞はにかんだ表情をする。なんだ? 丹菜って実は前髪フェチとか? なんか俺の服ギュッと掴んで上目遣いで含羞はにかんで来たら可愛い過ぎるって!

 そして、俺を見た奴は俺がトゥエルブって気付いていないようだ。カチューシャで前髪を止めてる時はオールバクになるが、今は前髪がある。その差か?

 でもって、前回の写真騒動に今回のこの頭で学校は大混乱になっている。


「葉倉さんと一緒に来た男の人って……え?」

「あれってトゥエルブだよね?」

「正吾君だよ絶対」

「マジかよ! 正吾イケメン枠かよ……」


 もう一回言うが、大混乱だ! そして二人で歩く文化祭。昨日はヒソヒソ話だったが、今度はストレートに質問の嵐だ。


「正吾君ってトゥエルブだったの?」


「———そうです」


「トゥエルブって……正吾君?」


「———そうです」


「えっと……正吾君ですか?」


「———そうです」


「正吾君、私を二番目の彼女にして下さい♡」


「正吾君は私のだからダメです!」


「———ダメです」


 ・

 ・

 ・


 そして今、部室に集まっていた。後輩達も実莉亜フレンズも来ている。いつまでも実莉亜フレンズっていうのも何だよな。残り数話だが名前言っちゃうけど、一人は「れん」もう一人が「らん」だ。

 

 顔とか似るようにメークしててちょっと双子っぽい感じだ。髪型も同じにしている。

 聞けば幼馴染で誕生日も近く、名前が似てるのも、お母さん同士が仲良いらしく、数日早く生まれた恋に似せて蘭の名前が付けられたらしい。感性が似てるのもそんな環境だったからかな?


「周りの方の反応はどうですか?」


「うん、皆遠巻きに見てる感じかな。恋と蘭、見てのとおりだし、Berry’zも普通に挨拶してくれたけど……」


 実莉亜の髪を弄って遊ぶ恋。それを眺める蘭が実莉亜の言葉を補足する。


「彼女らちょっと意識して近づかない感じだね」


「実莉亜ちゃんも髪型、今日は恋ちゃん達と同じにするんですか?」


「いえ、これ、ただ彼女達が遊んでるだけで……」


「丹菜さんと同じで元が可愛いから何やっても可愛くて……試しに私達の髪型をセット中♪」


「なる程です。私がこの髪型にするとこんな感じになるんですね? ちょっといい実験台ができましたね。ふふ。偶には私の髪もやって貰っていいですか?」


「いいんですか?」


「はい、是非! ……そうだ! 今から髪、お願いできます? これからステージ上がるんです」


「へ? ステージって?」


「はい、私達、ハイスペックス最後のステージです」


「…………え——————!」


「そういえば言ってませんでした。———オホン……私達がハイスペックスです。 キメッ!」


 メンバー全員、自分の事をやりながら、彼女達を見ずに丹菜の言葉に合わせて決めポーズをする。当然俺も明後日の方を見ながら決めポーズだ。


「内緒なんじゃ……」


「今日で最後です。全部出しちゃいます」


 どうやら陽葵も波奈々も同じ髪型にしたようだ。紗凪ちゃんは髪短くて出来なかった。残念。





 ———時間は進みステージに上がる時間に……。

 俺と波奈々以外はローブと仮面を付けてステージへ向かった。

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