第152話 Berry’z
———Berry’zが舞台に上がると、
「おおおおおおおおぉぉぉぉ!」
歓声が湧き上がった。流石フォロワー数五千の人気グループだ。彼女達の事を知る子も多い。知らなくても容姿がいいからそれだけで盛り上がっている。
そして早速一曲目だ。
出だしの一曲目は、上半身だけで誰もが踊れる振り付けを全員が寸分違わぬ動きでピッタリ揃えて踊っている。シンプルな動きも揃うと圧巻だ!
会場では真似して踊る人もいる。シンプルな振りだけに、戸惑いながらでも即席で踊れる。小さい子供も前の方に出てって一緒に踊ってる。波奈々も一緒に踊ってる。これは楽しい。多分、動画投稿で「踊ってみた」ってやつを意識した振り付けだ。俺もコッソリ踊っていたのは内緒だ。
「おおおおおおおおおぉぉぉぉぉ!」
一曲終わって、簡単にグループの紹介をする。個人単位の自己紹介は時間がないから無しだ。
そして二曲目はブレイキンだ。これは流石に真似できない。Berry’zでも踊れる子は限られてるみたいだ。
三人が中央で踊り、他のメンバーが後ろに並んで軽いステップと手拍子で会場を盛り上げる。
小さい子供が背中でクルクル回ろうと真似するが流石に出来ない。いちいち可愛い。
そしてヘッドスピン。頭痛てぇだろ! って思ってたら、帽子の中にパッドが入ってるらしい。以前、それを知った何処かの誰かが、バイクのヘルメット被ってやったら、えらい勢いで床に膝打ちつけて悶絶したとか……。
そして三曲目。全員でヒップホップだ。彼女らの踊りは一曲目と違って、皆バラバラだ。バラバラの筈なのに揃っている。矛盾しているがバラバラなのに揃って見えるのだ。よく見ると、腕や足、身体を動かす範囲とか角度は個々に違う。でも動くタイミング、止めるタイミングは皆一緒……そして、振り付けに関係無い動きは一切入れない。ちょっと腕を「クイッ」っとアレンジなんてやれば全て台無しだ。これはパワーを感じるダンスだ。俺らのアドリブバンドはこれに比べりゃ下品だ。この前はすまん。マジで下品だった。
「おおおおおおおおおおおぉぉぉぉぉぉぉぉ!」
———そして全てが終わって袖に戻って来た。会場は大盛況だ。
「お疲れ様です。凄かったです。カッコよかったです」
「うん、カッコ良かったよ」
丹菜と陽葵の絶賛にモジるBerry’z。
「うん、『ロックが下品』と豪語するだけあって最高のパフォーマンスだったよ!」
俺は素直に絶賛した。
「それ言わないで下さいよ……有難うございます。あの……会場、温めたんで……その……」
丹菜達をチラチラ見てはモジるBerry’z。
「分かってるよ、俺らが今日の最後だ。Berry’zの勢いを殺さないように頑張るさ」
隆臣は勝負そっちのけで張り切っているようだ。って言うより、勝負に拘ってるのはBerry’zの子達だけなんだよな。
「それじゃあ、皆行くか!」
「うん」
返事をしてフードを外す実莉亜。それを見たBerry’zは、
「———え?」
目の前を通り過ぎる実莉亜を目で追い、彼女がステージに上がると丹菜の顔を見て再び実莉亜の顔を見る。ステージに上がった彼女の横顔を見て再び丹菜を見る。
「そっくりでしょ?」
実莉亜フレンズがBerry’zに向かって話す。
「あんた達知ってたの? だからあんなに仲良く……」
「んーん、全然知らなかったよ。さっき初めて見せて貰ったの。勿論驚いたよ」
そして皆ステージを見つめる。
会場は会場で変な響めきが起きていた。一般客は何が起きているか分からない。
「葉倉さん、軽音部だから?」
「葉倉先輩のメガネいいな」
「しかし、あんな写真撮られてよく人前に出れるよな?」
皆、丹菜と勘違いしている。丹菜は袖からひょっこり顔を出して観客に向かって手を振った。すると、それに気付いた人が、
「え? 何で? なんで葉倉先輩二人?」
「は? じゃぁ、こっちは誰?」
「え? どっちが葉倉さんなの?」
会場は大混乱だ。ちょっと収拾が付かなくなった。
「なんか変な騒動にっなって来ましたね」
「ちょっとステージ上がった方がいいんじゃないか?」
「はい。ちょっと行って来ます」
丹菜は俺の言葉に従いステージに上がった。そして実莉亜の隣に立ちマイクを持つ。丹菜が現れ更にざわつく会場。丹菜と実莉亜を見た一般客も騒ぎの原因を何となく理解したようだ。
「えーっと、お集まりの皆さんこんにちは、3-Aの葉倉丹菜です。ちょっとお邪魔させて頂きました。今、私の隣に立っているのは2-Cの遊佐実莉亜さんです。最近、実莉亜さんが髪型変えたらこうなった、ってだけで……私にそっくりですけど、姉妹でも親戚でもありません。見分け方はメガネかな? 見慣れると目元がちょっと違うって言う人もいます。御免なさい、これだけ言いたくてステージに上がっちゃいました。では、お待たせしました、今から始まるララパルーザの演奏をお楽しみ下さい!」
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます