第151話 彼氏
———皆ステージ袖にいる。Berry’zの子達もだ。軽音部は全員勢揃いだ。芳賀さんもいる。オタク君は残念ながら部のブースの当番で来れなかったようだ。
セントフォーが勢揃いで、Berry’zと実莉亜フレンズは硬直していた。普通、この状況なら実莉亜フレンズの二人はBerry’zにやっかみ言われるなり睨まれるなりされるんだろうが、両者ともそれどころじゃないようだ。
実莉亜の服は丈が長いパーカーだ。彼女は今、そのフードを深く被って顔を見えにくくしている。陽葵はフードの中を覗き込んだ。
「あ! 実莉亜、髪上げんの?」
「はい。最近、お陰様で自信も付きましたし……」
「で、仲良くしてくれた子はこの二人なんだ? 二人は顔見たの?」
「はい。ついさっきですけど……」
二人は顔を見合わせ、そして丹菜の顔を見た。
「実莉亜良かったね。それに二人共。彼女と連めば私と関わる事も沢山あるだろうから、そん時はこの子と同じように私を名前で呼んでくれると嬉しいよ」
陽葵が実莉亜フレンズに心を開いた。彼女が部員以外で名前呼びを要求したのは初めてだ。因みに後日、この事を丹菜が実莉亜フレンズに話したら、号泣していた。ホントに良い子達だ。
「で、正吾君は顔丸出しじゃん! 今日なの?」
「ん? あぁ、降ろすの忘れてたな……どおりでここに来るまでに皆、俺の顔見てビックリすると思った」
なんかもうどうでもいい感じだ。「投げやりモード」だな。列の一番後ろを歩いていたから誰も気付いていなかった。
ついでにBerry’zの子らも俺を見てはヒソヒソ何やら話している。ヒソヒソ話が嫌いな丹菜は彼女達にぶっちゃけた。ま、俺の代わりに丹菜が行動してくれて俺的は楽だ。こいつの行動に俺にNOの選択肢は無い……いや、あるな。
「えっと、彼はトゥエルブで私の彼氏の正吾君です。皆さんに出回った写真は私と正吾君がラブラブにイチャついてるだけの写真です。御理解頂けたら消去お願いします」
「………」
突然の話に理解が追いついてないようだ。ここはステージ袖。舞台ではまだ演目が続いている。なので大きな声は御法度だ。丹菜は彼女達の行動を制する。
「皆さん、驚く前に口を両手で塞いでく下さい」
丹菜がそう言うと、皆、素直に両手で口を塞いだ。
「もう一度言います。彼は私の彼氏の正吾君です。そしてトゥエルブです。一応、明日まではできるだけ内緒でお願いします」
俺は一度髪を降ろす。するとBerry’zの子達の目が飛び出すんじゃ無いかって位大きく見開く。
「
俺は髪を上げながら最近気に入っている英語のワードで彼女達に確認する。
そして、俺の言葉に目を見開いて両手で口を塞いだまま激しく頷くBerry’z。
「しかし随分緩いね。『できるだけ内緒』って」
「まぁ、写真の誤解も解かないとですし、もう、私達も引退ですから……」
丹菜の言葉に三年生はちょっとセンチメンタルに微笑んだ。そして陽葵がスイッチを切り替えるように切り出す。
「で、さっき確認したとおり、順番はBerry’zからでいいね? アンタらが先に凄く盛り上がればこの子ら惨めになるし、アンタら以上にこの子ら盛り上がってもアンタらBerry’zの痛みも少ない。どう?」
「希乃先輩がそう言うのであればそれでいいです」
しかしBerry’z、何でこんなに私達セントフォーに従順なのか? 丹菜の「口を両手で」ってのも片手で間に合うのに素直に両手で押さえるし……素直な所は可愛い。でも、実莉亜にちょっかいは出さなかったけど、仲良くはしてくれなかった……残念だ。多分、この後、メチャクチャ後悔するんだろうな。
そうそう。彼女達、Berry’zの衣装だが、ヘソ出しTシャツで短パンかミニスカ+スパッツ(極短)だ。色は全体的に青と黒のツートン。そしてかなり練習してんだろうな。チラチラ見えるお腹が若干シックスパックだ。俺は素直に羨ましいと思った。
———さぁ! Berry’zの出番だ!
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