第111話 故意
———最寄りのスーパーでお昼ご飯をそれぞれ買い、俺の部屋に集合した。俺の部屋にはコタツテーブル一つしか無い。なので、
「陽葵、テーブル持ってくるんで手伝って貰っていいですか?」
「オッケー」
そう言って、丹菜と陽葵が丹菜の部屋からテーブルを取りに部屋を出て行ったた。
「あれ? 丹菜と陽葵、何処に行ったの?」
波奈々が不思議そうな顔をしている。以前ここに来た時は丹菜が隣の部屋だって事は内緒にしていたが、引っ越すので内緒にする必要も無い。
「前来た時言わなかったけど、丹菜の部屋、隣なんだ」
「……へ? この前来た時教えてくれなかったけど……」
「すまん。色々あってあんまり公に出来ない話しだから……ここに居る奴らにも内緒に仕切れなくなって仕方なく教えたような感じだったから……」
すると空からフォローを入れてくれた。
「波奈々、それと小宅もだけど、丹菜の私生活に関しては一切触れないで欲しい。かなりデリケートな内容だから……スマンが俺らからも本人の許可無く話せない……」
「なんか深刻な感じだね。でも、フェアがモットーの正吾君が仲間にも隠すって……分かった。私からは丹菜に何も聞かないよ」
「僕も何も聞かないよ」
「あー……そのことで後で皆に話しがある。色々事情が変わってきてな……波奈々にオタク君、先に言っとくけど、丹菜が一人暮らしだって事を踏まえた上で……二人が戻ったら話す」
すると丹菜が玄関で騒いでいた。
「正吾くーん……ちょっとお願いしまーす」
するとオタク君が颯爽と玄関に行き、テーブルを一人で軽々と持って戻ってきた。
「もう♡ ダーリン流石♡」
「僕の筋肉はこういう時しか使えないんで……フンス!」
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俺は食事をしながら皆に報告した。
「ちょっと皆に報告があるんだが……」
「なんだ? 結婚でもするのか?」
空の言葉に俺は乗る。
「そのまさかだ……」
「「「はぁ?」」」
波奈々とオタク君以外の皆が声を上げた。波奈々とオタク君はキョトンとしている。ここから先は、俺と空のいつもの会話だ。
「―――冗談だ……いや、あながち冗談でも無いんだが……」
「なんだ? 煮え切らないな」
「俺と丹菜、一緒に暮らすことになった」
「…………で?」
「『で?』って、随分反応が淡泊だな……」
「いや、今、一緒に住んでるだろ?」
「あー……言葉足らずだったな。引っ越して一緒に暮らすことになった」
「は? 引っ越す? 今だって一緒に暮らしてるようなもんなのになんで引っ越す?」
俺の説明に丹菜が業を煮やして話しに割って入ってきた。
「正吾君、話し端折り過ぎです。私が説明します。皆さんご存知のとおり……波奈々と小宅君は初耳だと思いますが、私、両親が居ません」
その言葉に、波奈々とオタク君は一瞬、目を見開いた。でも事前に「何かある」って匂わせておいたからリアクションも小さくて済んだみたいだ。
「で、先日、正吾君のご両親と私の親代わりになってる親戚の……」
「ちょっと待て―――い!」
俺は丹菜が違う話を説明しようとしている気配を感じて話を止めた。
「お前、何話そうとしてる?」
「え? 婚姻届の話しですけど……」
空が「婚姻届」というワードに反応する
「はぁ? 婚姻届? 正吾……は? 話しが全く見えないぞ!」
丹菜さん、あんた何言ってんだ! 俺は大層ご立腹だ! 今夜は説教確定だ!
「話しを戻しますけど、先日、正吾君とお父様と私の叔父さんとで、婚姻届けの『証人』って欄に名前書いたのを誕生日プレゼントに貰ったんです」
「「「「はぁ――――――?」」」」
「おい丹菜! それは引っ越しが決まった後の話だろ! その前段の俺の両親が海外赴任が終わった話しからだろ!」
「てへ♡ そうでした。ちょっと嬉しくて婚姻届の話ししちゃいました」
「いい、俺が話す!」
俺は溜め息を一つ吐いて一度落ち着き、
「俺の両親、もう海外行く必要無くなったから、俺が一人暮らしする必要も無くなったんだよ。で、実家に戻ることになったんだ。そうすると、丹菜がまた一人になるから、俺の実家で一緒に住まないかって話しになって、それで墓参り兼ねて、皆で丹菜の叔父さんの家に行って―――」
「婚姻届に名前書いて貰ってきたんです」
「だーかーらー! そうじゃないだろ!」
「同じようなもんですよ。私の叔父さんは正吾君と結婚しろって言ってるし、正吾君のお父様も正吾君を貰ってくれって、私、お願いされてますし……実質、先日の挨拶は結婚前の両家の挨拶と変わりありません」
おいおい、論点が全然ずれてるぞ!
陽葵が呆れ顔で溜め息を一つ。
「両親同士の挨拶済んで、丹菜は御前家と一緒に住んで……あんたらホントに結婚秒読みじゃん」
「兎に角、丹菜が俺の実家に住むことになった。引っ越しはGWな。それと大地達の家に近くなったんで宜しく!」
丹菜のせいで説明が遠回りになったが、やっと皆に話すことが出来た。
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