第110話 集合

 ———掲示板の前での一喜一憂も終わり……。


「それじゃあ、皆、お先~♪」


 そう言って、陽葵と大地は先に行ってしまった。


「じゃ、私達も♡ 十斗行こ♡」


「じゃあ、俺達も行くか」


「だな」


 波奈々は当然オタク君と腕を組んで教室に向かう。

 残った俺達……丹菜、空、芳賀さんと俺の四人は、男女別で歩いた。


 ・

 ・

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 俺と芳賀さんが教室に入ると一気に芳賀さんに注目が集まる。同時に俺達を歓迎する声が沢山聞こえて来た。


「わぁ……芳賀さんなんか綺麗になってる……」

「なんか……姫じゃなくて『ナイト』っぽいな」

「正吾君も同じクラスだ♪ やった♡」

「御前って何気に女子に人気あるよな」


 黒板には座席表が貼られている。俺と芳賀さんは二人並んで黒板の前に移動した。座席表を二人で眺めていると俺にからかいの声が背中から聞こえてきた。


「なんだ? 正吾、葉倉さん居ないから芳賀さんと浮気か?」


 背中越しのからかいに俺は声のした方を見た。そこに居たのは去年同じクラスだった奴だ。そいつの表情から今の言葉は挨拶の類いだって直ぐ分かった。俺と目が合うと軽く手を上げて挨拶をする。俺も笑いながら「丹菜には内緒な」って人差し指を当ててそいつの冗談に応える。横目に芳賀さんを見ると、芳賀さんも笑っている。余裕の笑みだ。


「何? 葉倉さんの彼氏ってこういう冗談も通じんだ?」


 去年同じクラスだった男がその言葉に色々と話し始めた。


「悔しいが、去年のEクラスで一番モテた男だ。大体葉倉さんがベタ惚れする男だぞ? 外見は見たとおりだが、内面は確実にイケメンだな」


 俺は自分の席に移動しながらその言葉に応じる。


「俺を褒めても何も出ねぇぞ。それと、他の女に俺の良さアピールしてもお前自身になんの得にもならんだろ?」


「だな。つーことで、御前正吾って最低な男だから女は近づくなよー! 痛い目見るぞー!」


「そうそう。それでいい」


 俺達のやり取りにクスクスと笑いが起きている。あんまり人との絡みは好きじゃ無いが、俺に絡んできた奴の印象が上がるのならこの絡みも悪くない。 


 俺は後ろから三番目の席に座る。芳賀さんは俺の左隣だ。


「正吾君隣になっちゃったね」


「丹菜の嫉妬が……芳賀さん覚悟しとけよ」


「ふふふ……そうだね」


 ・

 ・

 ・


 始業式も終わって、LHR。自己紹介と一学期の行事が伝達されて下校となる。


 さて……今年も新入生歓迎会……部活紹介の時がやってきた。


「そう言えば芳賀さん、弓道部の主将だったよね?」


「うん、去年の後期からね」


「うちらと連んでて大丈夫なの?」


「部活はちゃんと出てるし全然平気」


「今度の紹介は?」


「うちはやる事毎年同じだからね。近距離で巻藁まきわらに打ち込んでお終い」


「あれ、型みたいなの確認する用やつだろ? カッコいいよな」


「だね。私、あの姿勢がカッコよくて入部したようなもんだからね。ところで軽音部は? またギター弾くの?」


「今回も打ち合わせだな。芳賀さんも来るんだろ?」


「呼ばれれば喜んで♪」


「それじゃあ、一緒に行こう」


 俺と芳賀さんが廊下に出ると、丹菜と空も廊下に出てきた。丹菜が俺達の後ろの方に向かって手を大きく振っている。振り向くと大地達と波奈々達がこっちに向かって歩いていた。


「丹)部活紹介打ち合わせです。正吾君、お部屋お借りして大丈夫ですか?」


「正)いいぞ。飯、どうする?」


「空)皆で弁当でも買ってこうぜ」


「波)十斗いい?」


「オ)僕もいいんですか?」


「愛)私も行くから大丈夫」


「空)大地と陽葵は?」


「大)いいぞ」


「空)それじゃあ行こうか!」


 私立美玲ヶ丘みれいがおか高等学校軽音部+二名。俺の部屋に集合だ!


(110話目にして学校名が明らかに!)

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