第109話 聖女

 ———春休みが明けて俺達は今日から三年生だ。三年生と言っても大学受験が控えてるだけで俺と丹菜の仲が変わるわけでも……いや、GWから一緒に住むんだ。ガチで「内縁の……」って間柄になる。いや、今でも丹菜は通い妻みたいな感じになってる……この取り巻く環境……丹菜に負担になってるんじゃ無いかってちょっと心配だ。


「おはよう御座います」


「おはよ……ムニャ」


 目が覚めると必ず丹菜の可愛い笑顔が目の前にある。まだ夢の中にいる気分だ。

 そして、朝食を食べて、支度して、いつものようにマンションを出る。

 今日は日差しが眩しい……。


「ここからこうして学校に行くのもあと数回で終わるんですね」


「———あんまり実感ないな」


「ですね。来月には違う風景になるんですよ?」


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 そんな会話をしているうちに学校着き、掲示板の前で二人肩を並べて掲示板を眺めていた。今年のクラス発表だ。毎年の儀式みたいなもんだな。

 既に掲示板を確認した奴らは一喜一憂している。さて、今年の俺と丹菜は……。


 ・

 ・

 ・


「———正吾君、私、ちょっと職員室行って抗議してきます!」


「おいおい、クラスが別になったからってそこまでする事ないだろ。それに空だって芳賀さんとクラス別だぞ。」


 丹菜と空が同じクラス。芳賀さんと俺が同じクラスになっていた。


「う゛――― ……愛花とクラス変わって欲しいです……そうすればwinwinじゃ無いですか! 尚更職員室行って交代しても貰いますよ!」


「そんな簡単に交代出来たら、皆『自分も』ってなっちゃうだろ? お前だけ特別扱いなんて出来ないから我慢しろ!」


「う゛――― ……分かりました……」


 クラスは俺と芳賀さんがBクラス。丹菜と空がAクラスだ。すると後ろから陽葵が丹菜に声を掛けてきた。


「おはよ」


「おはよう御座います」


「何朝から揉めてんの。周り見てみ?」


 俺と丹菜が周りを見ると俺達を中心に丸く空間が出来上がっていた。みんな中心にいる俺達を見ている。丹菜は慌てて周りに頭を下げた。


「あ……皆さん御免なさい」


 そんな丹菜を「しょうがないな〜」といった感じで、皆、温かい目で見ている。


 すると、芳賀さんと波奈々も来たようだ。当然、空とオタク君を添えて。


「おはよ。クラスどうだった?」


「私と空君が同じクラスです。そして愛花と正吾君が同じ……私、今日から『芳賀愛花』って名乗るんで、愛花は『葉倉丹菜』を名乗って下さい。」


「ハハ……ちょっとそれは無理があるんじゃない?」


 流石に芳賀さんは笑って居るが呆れ顔だ。陽葵も丹菜の肩に手を置いて一言。


「丹菜、観念しな」


 俺達の隣では波奈々がオタク君とイチャついていた。


「十斗、今年も一緒だね♡」


「うん、席も隣だといいね」


「だね♡」


 波奈々達はDクラスだ。そして名簿を見る限り五十音順で席順を辿ると隣同士っぽい。

 別のところで大地と陽葵がイチャついている。どうやら同じクラスになったようだ。


「今年はやっと大地と同じクラスになったよ」


「Cクラスか……」


 今ここに学校のトップ4と言われる美少女四人が集まった。丹菜と陽葵は勿論だが、波奈々も以前から言ってるように陽葵並みに可愛い。そして三年生になってお姉様風味が強くなって後輩(特に女子)に大人気の芳賀さん。皆が見ている。

 すると……。


「尊い……聖なる四人だ……」

「聖なる……セント……セントフォー」

「セントフォー……」

「……セントフォー」


 なんか、皆、丹菜達四人を見て口々に「セントフォー聖なる四人」と呟いている……彼女らに変な呼び名が付けられたようだ。


「陽)私達なんか変な名前つけられちゃった?」


「愛)いいんじゃ無い? 気にしたって消えないだろうし」


「丹)ですね。悪い名前でも無いですから……減るもんじゃ無いですし」


「波)正吾君の口癖……ハハ」


 彼女ら「セントフォー」に対し、俺ら彼氏は一部の男達から「希望の四星よつぼし」と言われるようになる。殆どの奴らは「聖女とそのしもべ達」って呼んでるけどな。


(※昔、似たような名前のアイドルが居ましたが関係も関連も全く御座いませんので悪しからず)

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