第103話 再会

 ―――学校が春休みに入る直前、親父達が日本に帰って来た。

 今回は俺のところマンションに来ることは無く、春休みに入って、逆に俺達が実家の方に出向いた。


 丹菜は先に親父達の元へ行っていて、俺はバイトが終わってから実家へ向かう事になっている。春休みでシフトを十時から二時にしていた。そしてバイトが終わった今、俺はバイト先から直接実家に向かっていた。当然、丹菜には「帰る」ってメッセージを送っている。


 間もなく家に着こうとした時、ウチの真向かいの家から制服姿の女の子が出て来た。その制服はうちの学校の制服だ。そして俺と目が合うと、その子は俺に声を掛けてきた。


「あれ? 正吾君? 正吾君だよね?」


 俺は話しかけてきた女の子に見覚えがあった。


「―――紗凪さな……ちゃん?」


「はい! やっぱり正吾君だ♪ 六年ぶり?」


「ははっ、紗凪ちゃんだ! 六年ぶりか? 紗凪ちゃんは相変わらず元気そうだな」


「うん、元気だよ。正吾君も……って、高校一年の一学期までここに住んでたって聞いてたけど、今はここに住んでないよね? 今日はどうしたの?」


「あぁ……燈李とうりに聞いたか? そうなんだよ、俺、今、別のところに住んでてな。今日は親父達が海外から帰ってきてたから顔出しに来たんだ。紗凪ちゃんこそどうした? 燈李の家から出て来て……」


「うん、高校の制服取ってきたから燈李に見せに来たんだけど、正吾君ちに行ってるみたいだよ? しかも今さっき行ったばっかりだって言ってた」


「へ? 俺んちに行ってんの? ってか、紗凪ちゃんウチの高校に入るんだ?」


「そ、燈李もね」


「燈李ウチに来てるなら紗凪ちゃんも一緒に入るか?」


「うん! じゃぁ……ちょっと待ってて、着替え持ってくる」


 紗凪ちゃんはそう言ってウチの隣の家に駆け込んでった。

 彼女には色々聞きたいことがある。時間はまだあるし、紗凪ちゃんも時間があるようだからゆっくり話を聞くか……丹菜も紹介したいしな。


 彼女の名前は『新見紗菜にいみさな』今年高校一年生の女の子だ。

 俺が小学生の頃、夏休みにこの実家に泊りに来ていたんだが、隣の家も、同じく泊りに来ていた兄妹がいた。で、夏休み限定でよく遊んだ友達の一人だ。ただ、俺は専ら兄貴の方と遊んでいた。兄貴の名前は『新見晟にいみあきら』。俺の二個上のお兄さんだ。

 そしてもう一人、向かいの家の男の子も一緒に遊んだんだが……俺の家(?)に行ってるみたいだから後で説明する。


 ・

 ・

 ・


 ”―――ガラガラガラ……”


「ただいまー」


「お邪魔しまーす」


 俺と紗凪ちゃんは一緒に家に入るが……紗凪ちゃんは俺の服を掴んでいる。これ、彼女の幼い頃からの癖だ。彼女は誰かの服を無意識に掴む癖がある。但し、仲良くないと掴まないらしい。


 茶の間に顔を出すと、見知った懐かしい顔がそこにあった。ウチの真向かいに住んでる「二階堂燈李にかいどうとうり」だ。燈李は丹菜と普通に馴染んでいた。丹菜は、俺の後ろにいる女の子を見て「誰この子? なんで正吾君の服掴んでんの?」って顔で、紗凪ちゃんの手元と俺の顔を交互に見ている。


「おう、燈李、久しぶりだな。紗凪さなちゃん、お前んちに顔出してたぞ」


「燈李いた♪」


「正吾君久しぶりっス。それと……紗凪その制服……」


 すると、お袋が台所から顔を出した。


「紗凪ちゃん久しぶり。あら? その制服……正吾と同じ高校なんだ?」


「おばさんお久しぶりです。四月から燈李と一緒に正吾君と同じ高校に行く事になったんです。今日、制服取りに行ったんで、早速燈李に見せに行ったらこっちに来てるって聞いて、そしたら正吾君とも偶々玄関で会ったんで来ちゃいました」


 丹菜を見ると「私、皆の話に混ざれません」って感じでちょっと寂しい表情になっている。そんな寂しがんなくても、直ぐ仲良くなれる連中だから心配すんな。

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