第104話 挨拶
―――丹菜の知らない時間を共に過ごした幼馴染とはちょっと違うが、そんな友達と久々に再会した。丹菜はちょっと淋しそうな表情でいる。
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「どう? 燈李、似合う?」
そう言って紗凪ちゃんはスカートを掴み、ヒラヒラさせてポーズをとる。
彼女の身長は丹菜と同じ158㎝……よりちょっと低いか? 身長は高いわけでも無いのに手足が長くてモデルみたいな体型をしている。一言で言うなら「細い」だ。
前下がりショートボブで目がクリクリっとハッキリ二重で凄く可愛らしい子だ。
「おう、似合う似合う。お前、何着ても似合うから詰まんねーんだよ」
燈李は相変わらずな投げやりな態度だ。
「何その褒め方! なんかムカつくな!」
「しょうがねえだろ! 実際似合うんだから」
うーん、この感じ……懐かしい。二人は昔からこんな感じだ。口は悪いがなんだかんだでこいつらお互い認め合ってるんだよな。
「ふん! ちょっと奥で着替えてくる!」
そう言って、紗凪ちゃんは持って来ていた紙袋を手に奥の間に消えていった。彼女を尻目に、俺と燈李は近況を報告しあう。
「正吾君、同じ街にいるのに久々に顔見るっスね」
「だな。月一くらいでこの家に顔は出してたんだけどな。流石に燈李んちの呼び鈴は鳴らせなかった」
「まぁ、それはしょうが無いっスよ。高校生が中学生の家に遊びに来るってのもなんか変スから」
「まぁ、そう言ってくれると助かるよ」
すると、紗凪ちゃんは着替えを済ませて、紙袋を持って茶の間に戻ってきた。そして黙って燈李の隣に座る……おいおい! それ、くっつき過ぎだろ。相変わらず紗凪ちゃんは燈李に対して遠慮が一切ない。
「制服どうした? てか、もうちょっと離れて座れよ!」
「煩い! 制服はシワになるから着替えた」
「だったら着てくんなよ!」
「黙れ! 燈李に見せたかったの!」
この二人のやりとりも全然変わんないな。
「えっと……正吾君……紹介して頂けますか?」
「あー……ゴメンゴメン」
「そうだ! 正吾君、こちらの綺麗なお姉さん私にも紹介して」
紗凪ちゃんも丹菜の事が気になっていたようだ。当然だな。丹菜は掘りコタツから出て正座した。勿論、俺も正座している。それを見て目の前の二人もコタツから出て正座した。
「じゃぁ……まず、このお姉さんは、俺の彼女の『葉倉丹菜』です」
「葉倉丹菜です。宜しくお願いします」
丹菜は三つ指ついてお辞儀をした。
「え? 正吾君の彼女さんなんですか? 丹菜さん、正吾君に騙されてません?」
「ふふふ、騙されてませんよ。逆に私が正吾君を騙してますから」
「だったら大丈夫だ。あはは」
紗凪ちゃんの屈託の無い笑顔はメチャクチャ可愛い。
「で、こいつが向かいの家の……」
「改めて、
「宜しくお願いします」
丹菜は三つ指ついてお辞儀をした。燈李君もお辞儀をする。
既に自己紹介は済ませてたみたいだな。
「で、この子は隣の家の……今日は泊りに来たのか?」
「ううん、今、私とお婆ちゃんの二人で住んでるの。『
「紗凪ちゃん。宜しくお願いします」
互いに三つ指ついてお辞儀を交す。
「お婆ちゃんと住んでるって……この家から高校に通うのか?」
「うん。高校で転校はキツいからね。だったらお婆ちゃんの家から通えば楽じゃん」
「確かにな。で、燈李も同じ高校なわけか」
「そうっス。よろしくっス、先輩!」
丹菜は紗凪ちゃんの話から、彼女の生活環境が今ひとつ見えてないみたいだ。不思議そうな顔で俺と紗凪ちゃんを交互に見ている。
「正吾君、皆さんの関係って……ご近所さんなのは分かりますが……」
「俺の親父とお袋、転勤族だろ? で、この家には爺ちゃんと婆ちゃんしか住んでなくて、小学生の夏休みは、毎年この家に三週間くらい……殆ど夏休み中ずっとだな……俺だけ泊りに来てたんだ。で、紗凪ちゃん達兄妹も俺と同じで、夏休みは隣の婆ちゃんのところに泊りに来てたんだよ。で、お互いこの街には友達居ないから、一緒に遊んでたわけだ」
「で、向かいに住んでる俺も一緒になって遊んでたわけっス」
「俺が中学に入った時には爺ちゃんも婆ちゃんも死んで居なくなったから来なくなったけどな。で、高校一年の一学期はこの家に住んでて、燈李とは偶にだけど遊んでたんだ」
「私も中学に入ったら部活で来れなくなったんだよ。来ても二泊がせいぜいだったね。ウチもお父さん転勤族だから……で、お兄ちゃん大学行って一人暮らしだし、私だけお婆ちゃんと住むことにしたんだ」
「そうなんですか。お兄さんは何年生なんですか?」
「大学二年だよ」
「二年生ですか……私の従姉妹と同じですね。で、燈李君と紗凪ちゃんはお付き合いしてたりするんですか?」
「ううん、してないの。私は燈李のこと大好きなんだけどね♡」
紗凪ちゃんはそう言って、頬を赤く染めながら上目遣いに燈李を見て、下唇を噛む。そして燈李は、
「俺はこいつ無理っス」
と即答で全否定だ。ま、いつもの返しだな。
「何でですか?」
「こいつ見た目も中身も完璧で、俺じゃ釣り合わないっスよ。なんで俺の事好きなのか不思議でならないっス」
「え? 燈李、ピアノ弾いてる姿、カッコいいじゃん! 小学二年の時、私の誕生日に誕生日の曲弾いてくれたでしょ? あれからなんか燈李の事好きになっちゃって……そこから毎年夏休みとお正月は燈李に会うの楽しみにしてたんだから! でも、今年から毎日会えるから……えへへ~♡」
燈李の容姿だが、まず身長は俺より若干低い。俺も三年で身長が伸びて、今は178㎝だ。燈李は170㎝を少し越えたくらいだな。顔はカッコいい部類だと思う。好みで好き嫌いが分かれる感じか? 女の好みなんて男からはよくわからんもんだ。
「そうだ! ピアノで思いだしたっスけど、正吾君のバンドの『ハイスペックス』、あれヤバ過ぎっスね。いつか話そうって思ってたっスけど、二年経ってやっと言えたっスよ」
そう言えば、燈李は俺がトゥエルブだって知ってたな。
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