第91話 浅原波奈々 ②
そして四人の演奏のままAメロに戻る……私はなんとか付いていけてる……するとギターが少しオリジナルからはみ出し始めた。この人達、本当にオリジナルどおりに演奏しないんだ。でも、そのアレンジが中々楽しい♫ これって殆ど「セッション」だ。私はギターに合わせてキーボードの音を走らせた。なんか「音のデート」してるみたい―――そう思った瞬間、nIPPi の声にトゲが入ってきた……もしかして嫉妬してる?
―――そして曲は声にトゲを付けたままサビに入る……
「♫♬♫♬―♩―♪―♬♪♩♩――♪……」
”テレテレティレティレテレテレティレティリリレ♫ギュァーンギャギャギャギャ♪ティティティテ……”
nIPPi の歌声は完全に私に対する威嚇だ。しかも今までに無い圧が全身を突き抜けていく! トゥエルブに目を向けると……トゥエルブすら付いていくのがやっとのようだ、顔が「ヤベー!」って言ってる。凄く辛そうだ。辛そうなのに……口は笑ってる。
私は必死に二人の音に付いていった……はは、これが「バンド殺し」か……キツいって! ベースとドラムに目を向ける余裕がないから表情はわからないけど、彼ら二人も音を聞く限りギリギリのようだ。
―――そしてここからキーボードのソロパートだけど……、
”パパンピパパン♪ ピピピピピパペパン♪……
”チュイーン――テュレテュレティレリラティレリラ♪ギャッギャジャガジャン♫……
「オオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオォォォォォォォォ!!!!!!!!」」
そのままギターが私の音に合わせてきてくれた。助かった。あのままでソロはちょっとキツかった。観客のボルテージも上がりまくりだ!
再びトゥエルブと「音のデート」に入った♪ キツいけど楽しい……このキツさが「二人の世界」を作ってる感じだ。ギターの旋律が私を優しくエスコートしてるみたい……すると突然、ボーカルの声が割り込んできた!
「Fhiiiiiiiiiiii――――――Phaaaaaaaaaaaa――――――……
「オオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオォォォォォォォォ!!!!!!!!」」
nIPPi の声に客席が再び上がる。
nIPPi を見ると……目が怒ってる! ヤバい、浮気がバレた! そんな気分だ! トゥエルブに目をやると……焦ってる! 完全に顔が「キツい!」って言ってる。笑顔も消えた。指も限界みたい。そして、nIPPi と目が合うと「私の正吾君は渡さない」って気持ちが声に乗って身体を突き抜けていく。私ももう指が限界……そう思った瞬間……
”ダン! ダダン! ドコ……”
大宮君がドラムで私達のケンカを制してくれた———。
———そして、大きく脱線した曲は元に戻ってなんとか終了したが……私は演奏が終わった瞬間、爽快感とある種の刺激が全身を突き抜けていった。全身を突き抜けた正体不明の刺激の気持ちよさに、私は事もあろうかステージの上で……イッてしまった♡
ステージに上がる前に希乃さんに耳打ちされた言葉……
「丹菜と初めてのステージだとイッちゃうから♡」
私は足に力が入らなくなって床に座り込んでしまった。
ステージ袖にいる希乃さんに目を向けるとニヤニヤしていた。
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