第50話 両親

「―――どうぞ」


「お♪ ありがとう」


「ありがとう御座います」


 丹菜は親父達にお茶緑茶を出してそのままコタツの外に正座した。


 今、俺の部屋で俺と丹菜、そして、親父とお袋の四人でコタツを囲って座っている。


「ズズ———……あ~……緑茶最高!」


 俺はコタツから出て正座した。そして改めて丹菜を親父達に紹介した。


「改めて紹介するよ、隣の部屋に住んでて俺とお付き合いしている『葉倉丹菜』さんだ」


「正吾君とお付き合いさせて頂いています『葉倉丹菜』と言います。宜しくお願い致します」


 丹菜は手をついて丁寧に挨拶をした。


 親父達もコタツから出て正座した。そして改めて丹菜に自己紹介をした。


「正吾の父、御前大吾みさきだいごです。そして妻の―――」


心花みはなです。よろしくね丹菜ちゃん」


 丹菜はお袋をみて「ポー」っとしている。見惚れているようだ。息子の俺が言うのも何だが、お袋、実際綺麗だからな。親父はワイルドな雰囲気だけで大して格好良くも無い。


「明日来るんじゃ無かったのか?」


「すまん、日付変更線の事を考えて「明後日今日から見ると「明日」」って言ったんだが、そんなもの全く関係無くて結局今日になってしまった」


「なんだそれ、東南アジアにいたんだろ? 日付変更線全く関係無いだろ」


「だな。無知って怖いな」


「それで良く海外行ったもんだよ。で、またどっか行くのか?」


「ああ、こっちには一週間くらいいて、今度はアフリカに行く事になってな」


「『世界が呼んでる』って、海外に何しに行ってるんだ?」


「何の事はない、海外支援って奴だ」


「そんな活動してたのかよ」


「どうだ? 今からでも一緒に来るか?」


「断る! で、今日は何処に泊まるんだ? 当然布団なんか無いぞ」


「大丈夫、家で寝るさ。お前、あっちの家、全然様子見てないだろ?」


「一応、月一で様子は見てる。見てるだけで手は掛けてないぞ。流石に庭は草がボウボウになってたがな」


 そう言えば、まだ丹菜を連れていったこと無かったな。行ったところで俺は三ヶ月程度しか住んでなかった家だから思い入れも何も無い。語れる事は何も無い。


「しかし、人間らしい生活してて安心したぞ。100%丹菜ちゃんのお蔭なのは聞くまでも無さそうだな」


「ああ、言うまでも無い」


 俺達家族は皆丹菜を見ている。感謝の眼差しだ。俺はコタツの中で丹菜の手を優しく握った。


「ところでだ、お前らのバンド、MY TUBEで見させて貰ってたけど、あのメンバーよく集まったな。特にボーカルの子、ぶっ飛んでたな」


「彼女だよ」


「———あ?」


「アホ面すんな。丹菜だよあのボーカル」


「―――はぁー! 凄いな」


「もっと驚け、ドラムは大宮さんの息子、キーボードは希乃さんの娘だ」


「は? 大宮と希乃って……なんと! それは……知っててバンド組んだのか?」


「偶然だ。あいつらバンド組んでて俺とコイツ丹菜が後から入って大宮さんのところに行って初めて知った」


「へー、そうか。ところであいつら元気か?」


「みんな元気だよ。大体、ここを去ってまだ一年経ってないだろ?」


「そうだよな。あとで顔出してみるか」


「だね。……瑠衣るいだけ連絡取れないんだよね。どうしてるのかな……」


 ん? 「ルイ」? ボーカルか? そう言えばボーカルの人ってまだ話しに出たこと無かったな。どんな人だったんだろ?


「そう言えば親父達のバンド、動画とか無いのか?」


「あるんじゃ無いか? 俺達はそいうのアップしてなかったから、あるなら当時ファンの子が出した物だろうな」


「バンド名は?」


「『LIONライオン Heartハート』 だ」


「後で調べてみるよ。ところで昼飯どうするんだ? 明日来るって言ってたから何も準備して無いぞ」


「それなら皆んなでどっか食べに行くか」


「だったら希乃音のカツサンド食べたいな。丹菜どう?」


「私はいいですよ。もう一度カツサンド食べたいと思ってましたし。カレーも中々捨てがたいですけどね」


「いいね、久々に直樹希乃と話もしたいしな」


 俺達は早速「喫茶希乃音」へ向かった。

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