第47話 食堂

 ———昼休みになった。


 芳賀さんからお誘いがあった。


「ね、お昼一緒に食べない? 空も大地君誘ってるよ」


 丹菜と陽葵、そして俺の三人は芳賀さんの誘いで食堂へ行った。食堂へ行くのに1-Dの前を通過する。空と大地も合流して三組のカップルで食堂へ向かった。


 食堂に入ると、食堂にいる人皆が俺達を見ている。



 ここからは、学校内で俺達六人がどう見えているか教える。たまに第三者の言葉が入るが、基本は俺の主観だ。


 まずは俺だが―――前髪上げればイケメンだ。これは丹菜が言ってた事だ。前髪下ろすと根暗ボッチに変身する。以前は誰も寄ってこなかったが、文化祭以来声を掛けられるようになった。正直、ちょっと嬉しい。ギターを持つと性格が変わると言うか元に戻る。丹菜が俺の彼女になったことで泣いた女は誰もいない。


 次に空だ。―――正直ジャガイモみたいな奴だ。みんなもジャガイモみたいな奴だと思っている。外見で女の子は絶対寄ってこない。ただ、男どもはコイツを「男気ある奴」と認識している。芳賀さんが彼女と知ると、空を知る男達は「当然だな」と誰もが納得した。


 次に大地だ。―――コイツはとにかく普通だ。「特徴が無いのが特徴」と言うほど外見は普通。外見について女曰く「何も惹かれる部分は無い」「嫌う要素も無い」という事だ。空気だな。ただ、コイツの内面に触れた女は大地に依存し始める。妙な「安らぎ」が癖になるそうだ。陽葵は幼馴染と言う事もあるが、その「安らぎ」に触れ続けた女だ。大地以外の男はもうダメみたいな事を言っていた。実は大地、クラスの女子からは結構モテていて、陽葵が彼女と知りショックを受けた子は多いと言う話だ。

 

 そして三人の女子に話は移るが、最初に芳賀さんだ。

 芳賀さんは、「綺麗系女子」で一年の男子の間では知らない奴はいない。告白イベントも空と付き合うまでは月一で有ったくらいだ。性格はキツイがそこがマニア受けするポイントである。リーダーシップもあり姉御肌が強い。外面そとづらは「ツン」しか無く、空に対しては「デレ」しかない、ある意味「ツンデレ」キャラである。


 次に陽葵だ。彼女は「素朴系美少女」として一年の男どもは全員知っている。今まで月一、二回程度だった告白も、一月に入ったら五回告白されたらしい。最近思うが素朴な感じが妙に可愛く見えてきた気がする。性格は見た目に反して強気で攻撃的。大地が一緒だとラブラブモード全開だ。「美女と野獣」というより「美少女野獣」といった感じか?


 最後に葉倉丹菜だ。「学校一美少女」として全校生徒が知っている。見た目が可愛く、性格も誰にでも人当たりよく、誰にでも平等と言われている。一応、嫌いな奴はいるが顔に出さない。外面がいい。料理も美味く、エッチが好きだ……多分。俺の彼女になったわけだが、現在、俺は学校中の男の嫉妬を浴び続けている。


 俺達が食堂内を歩いていると、周りが騒ついていた。


「あいつ葉倉さんと一緒にいるけど昨日の告白あれマジだったの?」

「芳賀さんの彼氏って……あの人なの?」

「希乃さんの彼氏って……普通だ」

「あんなもっさい奴らにあんな可愛い子達が彼女なんて……世の中じゃないか!」

「あいつら俺達の希望だよ」


 そんなカップルズが一つの丸いテーブルに座った。「美女達と野獣達」と言ったところだろうか? しかもそれぞれに男女が結構べったり気味に座っている。女の子は三人とも屈託なく笑っていて皆普段の倍の可愛さになっている。男どもは浮かれる事なくいつもと変わらない空気だ。人前なので、若干照れが見えるが誤差の範疇だろう。


 周りの視線を余所に俺達は弁当を広げた。


「丹)正吾君、はい。いつもの弁当ね」

「正)お、いつも悪いな」

「陽)ははーん、これが噂の愛妻弁当かぁって、私、毎日見てるね」

「丹)だって、私の弁当と中身同じですからね」

「大)お前、いつから作って貰ってた?」

「正)二学期入って……間も無くか?」

「丹)ですね」

「愛)その頃教室では完全に他人のふりしてたよね? 今この状況見てあの頃の二人を思い出すとニヤニヤしちゃうんだけど……」

「陽)それじゃあ私から、大地も知らない衝撃の事実教えるね」

「大)何? この弁当陽葵が……いや、お袋から手渡されてるから違うか……」

「陽)大地の弁当、実は一個だけ私が作った物が毎日入ってたのだよ」

「大)え? そうなの?」

「陽)毎朝、おばさんと並んでおかず詰めてるんだけど、その卵焼きは私が毎日作ってたの」

「大)そうだったの? おかず詰めてた事も知らなかったよ」

「愛)皆いいな。私も何かしてあげたいけど……」

「空)たまに愛花が作ったっておかず、トレードしてるじゃん」

「愛)あ、そうだった。普段からやってたから特別感無かったけど私が作ったの結構食べてるね」

「正)———なんだかんだで皆ご馳走様な感じだな」


 ———まさかここにいる面々がハイスペックスのメンバーだなんて誰も思っていない。


 ついでにハイスペックスの活動だが、クリスマスライブ以降、二回ほどライブをやっている。活動してないようでちゃんとしてるから悪しからず。


 俺達は食事も済ませて、少し早いが食堂を出た。結構注目を浴びてたから居心地が悪かったのだ。

 廊下を六人で歩いていると陽葵が何かに気づいたようだ。


「なんか……ギターの音……聴こえない?」


「ん……聴こえますね。部室棟からです」


 音は部室棟から聴こえてきた。部室棟へ近づくと音がどんどん大きくなっていく。そして俺達は音のする部屋の前まで来た。


「———ここだ」


 その部屋の入り口には「軽音部」と書かれた紙が貼ってあった。

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