第40話 愚々
―――冬休みも終わり、学校が始まった。
新学期最初に話題になったのは丹菜だった。と言っても軽いものだ。
朝、何時ものように登校して、何時ものように席に座って周りの声に耳を傾けていると丹菜の事を話題にしているグループの話し声が微かに聞こえた。
「ねえねえ、休み中に葉倉さんがカッコいい男の人と一緒に歩いているの見たんだけど……」
―――以上だ。
本人に確認を取ることも無く、憶測で話しは終わったようだ。一応、それなりにその話題は広まったようだが、気が付くと誰も気にしなくなった。
そして―――。
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―――時は流れ、二月も一週間が過ぎた頃。いつものように昼休み、弁当を一人で食べて教室へ戻ろうと廊下を歩いていると、空と大地が廊下で窓の外を眺めていた。
「———どうした? 二人で外見て」
「あれ見てみ?」
「陽葵だな……他に男がいるようだが……告白か?」
ちょっと野暮だが暫く眺めていると、陽葵は一礼してその場を去っていった。勿論会話は聞こえない。
「最近多いらしい」
「丹菜も言ってたな」
「大地も空みたく公然とすれば良い。誰も寄ってこなくなるぞ」
「ちょっと考えるか……」
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―――とある日曜日。
今日は丹菜が俺の部屋に来ていない。普段であれば九時には部屋に来て勝手にテレビを見ていたりするんだが……。たまにはこんな日もあるだろう。
「(お? バイトの時間だ。)」
出かける準備をして玄関を開けると……見覚えのある女の子が丹菜の玄関先に立っていた。
「あれ? なんで正吾君、隣の部屋から出てきたの?」
「(あれ? なんで陽葵が丹菜の部屋に入ろうとしているの?)」
———丹菜、俺に話すの忘れてたな?
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