第39話 祈願

 ―――二礼二拍手一礼……。俺と丹菜は拝殿で神様にお願い事をした。


 そのあと、おみくじを引いてみた。


「―――小吉ですか……正吾君は何でした?」


「―――小吉だな」


 まず、自分達のおみくじの内容を読む。そして交換して俺は丹菜のおみくじを読む……いつも思うが、おみくじに書いてある内容って、なんで記憶に残らないんだ? 家に着く頃には全部忘れてる。


 俺は丹菜のおみくじを読み終えて彼女に返した。そして、おみくじ掛けにおみくじを結んで……、


「正吾君お守り買いませんか?」


「おお、そう言えば俺、お守り持ってないや」


 お守りを買いに授与所へ立ち寄った。お守りは、「家内安全」「交通安全」「健康祈願」「学業成就」と、結構種類はある。その中で一際目立つお守りがあった。


「なんですか……この『なんとかなるお守り』って……」


「ここの名物(?)らしいな。結構有名だぞ」


「そうなんですね? それじゃあ私はこれで」


「俺もこれ下さい」


 お守りには「なんとかなるお守り」と書いてある。この神社の名物らしいが、「なんとかなる」ってなんか適当すぎるぞ。お守りに「やる気を感じない」って思ったのは初めてだ。


 このあと、俺達は境内を一通り歩いたので帰ることにした。


「―――そろそろ行くか」


「ですね―――そう言えば、近くに公園があるようです。展望広場も有るみたいです。行ってみませんか? 海、見えるようですよ」


「そうだな。時間もまだまだ有るし行くか」


 俺達は、展望広場がある公園へ向かった。


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 公園は神社から十分も歩かない場所にあった。そこにはベンチが幾つかあり、そのベンチに座って海を一望できた。


「凄く綺麗な景色ですね」


「―――写真撮るか」


「是非♪」


 俺達は肩を並べ、俺がスマホを構えてシャッターを押した。その後、暫く互いに撮り合ったり、肩を並べて撮ったりしてその場を楽しんだ。


 撮った写真を互いに見せ合い、なんか「丹菜と居るこの雰囲気いいな」って思ってる自分に気付いてしまった。丹菜は何気なく俺の右腕にくっついて座っている。こいつがベタベタくっついてくるのは全然嫌じゃ無い。多分、これが他の女だったら嫌なんだろう。そこそこ仲良くしている陽葵でも御免だ。


 海を眺め、無言の時間が少し流れた時、ふと聞きたくなることを思い出した。


「―――丹菜……神様に何お願いした?」


「正吾君……それ、聞いちゃいます?」


「―――聞いちゃいます」


「……エッチですね」


 ん? 何、その「エッチ」って……初体験早く済ませたいとか?


「そんな願い事なの!」


「ふふふ。そんな願い事……だったらどうします?」


 そんなんだったら俺はいくらでもお手伝いしちゃいますよ♪


「……俺で良ければ叶える……よ?」


「スケベ!」


 嫌がられた……調子に乗りすぎた……反省だ。


「―――すまん」


「正吾君は何お願いしたんですか?」


「―――俺か? 俺は……ゴニョゴニョゴニョ……」


「聞こえませんよ」


 こんな願い事、本人目の前に言えるわけないだろ!


「―――忘れた!」


「ずるいです!」


「あれ、目の前に知らない美少女がいるぅー」


「そのレベルで忘れるつもりですか!」


「ははは。ゴメンゴメン。願い事って人に言うと叶わないなんて言うからな」


「それを知ってて私に聞いたんですか! 尚のこと許せませんよ!」


「はははははははは……」


「もう……ふふふ……あははははははは……」


 珍しく腹を抱えて笑ってしまった。こんなに笑ったのは久々な気がする。丹菜も珍しく大笑いだ。


 早速願いが叶った……ようだ。






 俺が神様にした願いは―――













「丹菜と共に笑える日々を過ごしたい」







           これ一択だろ。

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