第30話 緊張
———土曜日。
俺は一人で大地の家に向かっていた。今日は学校モードだ。丹菜と一緒に立っているところを学校の奴に見られるとマズい。なので丹菜とは別に先に大地の家に向かった。
丹菜は芳賀さんを連れてくるのでステンドグラス前で待ち合わせだ。流石の俺もステンドグラス前が何処か学習した。ついでに、La・INの「秒で返信がマナー」も間違っていた事を丹菜に教えてもらった。腹抱えて笑われた。
そして、今一人で行動している俺は、先日のカツサンドの味が忘れられず、早く家を出て「喫茶希乃音」に来ていた。
“カラン♩コロン♫カラン♪……”
「こんにちは……」
「あ、正吾君いらっしゃい。一人?」
出迎えたのは陽葵だ。
「ああ。———ここいいか?」
「どうぞー」
陽葵はエプロン姿でテーブルを拭いていた。この姿、学校の奴らが知ったらこの喫茶店に殺到するぞ。
俺はカウンターに座った。するとマスターが奥から顔を出した。
「お、正吾君いらっしゃい。また来てくれたね。ありがとう。でも彼女さん今日も一緒じゃないんだ?」
うーん、陽葵の前で彼女さんはキツイな。ま、スルーだな。
「えー、まー」
「ふーん、彼女ねー」
陽葵はニヤっとした目で俺を見る。
「ところで、前も来てくれたんだ。いつ来たの?」
「先週か? お前とコンビニであった日だな」
「あ、あのエロ本読んでた日? そうだったんだ。二週連続で来てくれるなんて嬉しいね。そんなに美味しかった?」
「———エロ本は忘れてくれ。味については俺がここにいるのが答えだな」
「なら注文はカツサンド一つと飲み物は?」
「カフェラテで」
「はい。繰り返します。カツサンド一つとカフェラテ一つですね。少々お待ちくださいませ」
陽葵もマスターと一緒で友達モードじゃない。いいね、決める時に決める。ロックだ。
・
・
・
食事が終わり、俺と陽葵は一緒に大地のところに向かった。
「オジさんこんにちは」
「いらっしゃい。何だ陽葵、大地以外に男できたか?」
「この前のバンドメンバーでしょ? オジさんボケ始まった?」
「冗談だよ。大吾の息子忘れるわけない。二階に居るよ」
「はーい」
「———お邪魔します」
陽葵はどっち付かずで両方家族みたいなもんなんだろうな。幼馴染……ちょっと憧れる。
”———ガチャ“
「うーっす」
「お、来たな」
「何だ空、ちょっと気合い入った服だな」
「無意識に力が入ったようだ……はは」
今日の空は着ているものは普通なのだが、髪型がステージに上がる時の髪に限りなく近く仕上げてきていた。
「で、今日の作戦はなんかあるか?」
「ここでは無い。皆、俺と芳賀さんをくっ付けようって雰囲気を作らないでくれればいいよ。アレやられると一気に冷めたりするからね」
「———分かった。自然体だな」
「それで宜しく」
暫くして扉が開いた。
“———ガチャ”
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