第20話 万端
―――日曜日。
バンドの練習をした。特に何があったとかは無い。バンドの練習以外は、いつもと同じ日曜日だ。
―――月曜日。
教室に入ると、何やら丹菜と陽葵がテンポ良く会話をしているのが聞こえてきた。
以前と違い、俺は、彼女らに挨拶をして席に着いた。
「うす」
「あ、おはよう御座います」
「正吾っぺおはよ」
「―――ん？ 正吾っぺ？」
「可愛く無い？」
「―――いいんじゃないか？」
「ちょっと真剣に考えてよ」
「―――面倒だ」
「正吾っぺ……ちょっと言いにくくないですか？」
「ダメかな？ それじゃあ『正吾りん』」
「―――俺の名前で遊ぶなよ」
「いいじゃん。同じグループで物作ってんだし。『御前君』なんてよそよそしいよ。それに『ボッチの極み』だから誰も正吾っぺの名前呼ばないって」
「―――だな」
「え―――！ そこ認めちゃうんですか？」
「―――事実だろ」
「事実でも認めちゃ駄目ですよ」
「―――そうか？ ま、お前ら呼びやすいように呼べば良い」
「私は普通に『正吾君』でいいと思いますよ」
「そうだね。それじゃあ『正吾君』で決まりだね」
「―――よかったな」
「おい！自分のこと―――！」
名前の呼び方なんてどうでもいい……出来れば丹菜には「
ついでの話しで、高瀬が教室に入ってきたが、俺達に話しかける事は一切無く、たまにこっちを見るが直ぐ目線を逸らす。俺達に関わらないように意識しているようだ。
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―――移動教室。
女Ａ「正吾君移動教室だよ」
女Ｂ「正吾君遅れるよ」
芳賀「正吾君忘れ物無い？」
―――なんだ？ 今朝のやりとりのせいか？ やたら俺に話しかける女がいるな。しかも皆「正吾君」だ。―――減るもんじゃ無いし別にいいか……。
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―――放課後。
「結構順調に進んだね」
俺達のセット班は順調に進んでいた。芳賀さんが言うには、他のグループの男共が下心全開で、丹菜と陽葵に良いところを見せようと張り切って作ってくれたのが原因らしい。二人とも隅に置けない奴らだ。
女子も高瀬の気を引こうと高瀬にベッタリしながら一生懸命作ったようだ。高瀬のハートを掴むように頑張って欲しいもんだ。
それと、陽葵の話では、放課後作業が出来ない俺の代わりに、頑張った女子が数人いたって話しだ。俺はその子達を教えて貰ってお礼言ったら、なんか「キャー！」って悲鳴上げられたんだが……俺の事嫌ってんじゃ無いの？
俺達の作業も終盤。陰のリーダー芳賀さんが仕切り始めた。
「多分、今日でセット班は終わるから、明日から他の班手伝おうか」
「手伝うの班単位じゃなくて良いよね？」
「―――ちょっと待ってて、確認してくるから」
流石「陰の支配者」じゃない「陰のリーダー」だ。全体の作業状況とか人数配分とか見てるんだろう。安直に「OK」を出さないところは凄いな。俺も見習いたいね。
「―――どこも進捗同じくらいだから、個人単位で手伝っていいみたいだね」
「それじゃあ、俺は看板に行ってくるよ」
そう言って、高瀬は「看板・パネル班」に行った。数人女の子も着いていった。
「正吾君、小道具行きません？」
俺は正直なんでも良かった。丹菜が誘ってきた。断る理由は無い。
「―――いいよ」
因みに陽葵は衣装に行った。
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作業は順調に進み、いざ本番を迎えるのだが……バカが一人迷惑を掛ける……。
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