第21話 文化祭
―――文化祭一日目。
ついに文化祭が始まった。
我が1-Bはご存知のとおり「お化け屋敷」をやる。準備は完璧。あとは演出だ。お化け役だが俺のグループ五人はお化け役はやらない。雑用とかはあるが大した仕事は無い。なので結構フリーだ。
ついでに、大地と空の「1-D」は、「姫と七人の魔法使い」という劇をやるらしい。どういう劇かは分らないが、二人は出演しないらしいので見に行く必要は無いだろうって思ってる。
体育館のステージではクラス単位の出し物や、個人単位の出し物をやる。クラス単位で体育館のステージを使うクラスは三クラス。午前九時から二十分、入れ替え十分の計三十分を三回、十三時半まで講演する。昼時間は無しだ。そして、十三時半から個人出演でステージが使えるが、当然事前登録制で、一組十五分一回キリの出演だ。ステージ講演は四時までやるとのこと。
もう一つどうでもいい情報として、高瀬のバンド……確かバンド名「
―――既に文化祭は始まり、初日、俺と丹菜は看板片手に校内をウロウロ宣伝活動をしている。
丹菜は素のままで歩いている。俺は身体に包帯を巻かれてミイラの扮装で歩いているが、丹菜にはそう見えないらしい。
「もう少し、しっかり巻いてもいいんじゃないですか?」
「ミイラって、結構巻き方緩くないか?」
「多少緩い部分在りますけど、正吾君のはただ、身体に引っかけてるだけですよ」
「肝心なのは、看板だからいいんじゃね?」
「うーん……ま、いっか……ですね」
丹菜は俺の隣で上機嫌で歩いている。笑顔でいるなら何も問題はない。
「折角だか寄り道していきません?」
「いいよ。このエリアは部活のブースだな。
「ここ、入ってみますか?」
「宇宙人研究室?」
中に入ってみると宇宙人というよりは、アメリカの人気ドラマだった「スタート・レック」に関する映像が流れ、関連本が陳列れているだけだった。
「ちょっと残念ですね」
「―――だな」
次に目に付いたのは占いだ。
廊下の一角でやっていた。
丹菜に引っ張られ占いのコーナーに座った。
「いらっしゃい。何を占いますか」
「それじゃあ、二人の今後について」
「分りました。生年月日を教えて下さい」
「三月三十一日」
「私は四月二日です」
ん? 俺より丹菜の方が年上なのか?! ほぼ一歳。なんだろう? この敗北感。
「では占います―――えーっと……明日二人は一人の男性を助けます」
「へ? 『今後』って随分と急で具体的な内容だな」
「はい。占った私もビックリです。実際には五人でローブを纏って、ステージに立ちます」
「ん? なんか……心当たりがあるな」
「ありますね」
俺と丹菜が「五人」で「ステージ」って言ったら「ハイスペックス」しか無いよな? 俺達、明日出演予定無いんだが……でも人助け? 何だろうな。
丹菜は不思議そうな顔をしている。
「有り難うございました」
俺達はこの場を離れた。
「なんでしょうね?」
「なんだろうな」
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俺達は一通り回って、自分達の教室に戻ってきた。
「交代いいですよ」
陽葵に看板を渡した。今度は陽葵と芳賀さんが回ってくる番だ。
「どっか面白いところあった?」
「うーん…占いですかね?」
「占い?」
「なんかね……妙に具体的でした。後で教えますね」
「楽しみにしてるよ」
俺と丹菜は一応、雑用係としてここに待機だが、実際何もすることはない。ちょっと時間を持て余している。
「なぁ、中入ってみるか」
「そうですね。どんな感じか分ると宣伝も変わってきますし」
俺達は自分達が手がけたお化け屋敷に入ってみた。
俺達が入ると、中から「御前と葉倉さんだ」と声が聞こえた。なんだ?
・
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―――ん? すんなり出て来てしまったが……お化けが一人も出てこなかった。
入り口で受付している奴に丹菜が理由を聞いたみた。
「だって、葉倉さん驚かせたら、怖いって言って御前に抱きつくよね? 御前に美味しい思いさせてたまるか! ってところだね」
ま、そうなるわな。十分納得だ。だがお前らは知らない。俺は毎朝、ちょっぴりだけど丹菜と密着しながら通学しているのを。
後で、大地と空とで入ってみるか……。
文化祭初日、特に何事も無く無難に修了したのであった。
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