正体を隠して生活してる俺の隣に住んでる美少女とカラオケ行ったらとんでも無い才能の持ち主だったからバンドのボーカルに誘った。

第17話 遭遇

　——— 一緒のベッドで寝て起きたその日の朝。

　今日は土曜日。俺は丹菜が作った朝食をいただきバイトに出かけた。

　しかし、朝から最高だったな。丹菜が彼女だったら……いや、それはないな。

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　毎週土曜日は、ライブが無くてもライブハウス「Seeker」に顔を出す。と言うかバイトだ。前も言ったが、何時までという決まりは無い。

　俺が助っ人で出演すると、客の入りが良くなるので、店としては十分稼がせて貰っているとのことだ。

　ただ、今後は助っ人することも無いので、土曜日、ここに居座る必要も無くなる。オーナーと要相談だな。

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　―――今日は「DJ祭り」だ。なので、バンドマンは居ない。所謂ラッパーとかDJな奴らが店内を闊歩している。ついでに言うが、こいつらの音楽は嫌いじゃ無い。目的に対するアプローチが違うだけだ。結局、皆の目的は「音を楽しむ」こと。ただそれだけだ。

　今度、DJがやってる「スクラッチ」って奴をギターで表現してみようと思ってたりする。ギターの「ピックスクラッチ」とは違うのであしからず。

　―――午後になってちょっと一息、フロアーでライブを眺めていると、見たことがある横顔が見えた―――丹菜だ。

　丹菜はフロアーの後ろの方で縦ノリしている。ノリノリで可愛い。

「丹菜、来てたのか」

　フロアー内ではスピーカーの音量が凄い。

　俺は顔を寄せ、丹菜の耳元で声を掛けた。彼女の腕にちょっと密着してしまったが事故だ。すまん。

　彼女も俺の耳元で返事をしようと、肩辺りの服を鷲掴みにして引っ張り、強引に俺の頭を引き寄せてきた。なんか、馴れ馴れしい感じがちょっと嬉しく思ってしまう。耳に少し柔らかい感触がしたが……鼻がぶつかったようだ。

「他の人のライブって見たこと無かったので、ちょっと勉強に来たんですが…」

「今日は『DJ祭り』で残りは全部これだからバンドは来ないぞ」

「みたいですね。なので暫く楽しんだら帰えります」

　今日は丹菜にとっては休日だ。今一人でいるって事は、帰っても一人なんだろう。丹菜のその状況にちょっと寂しさを感じた俺は、日頃のお礼も兼ねて、何かして上げたいと思った。と言っても一緒に居ることしか出来ないけどな。

「だったら、一緒に出るか？」

「仕事はいいんですか？」

「俺、結構自由なんだよ」

「それじゃあ、この人達終わったら、通路で待ってます」

「OK！」

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　帰り支度をしていると、ライブが終わったようだ。

　少し遅れてスタッフルームを出ると、丹菜は通路で待っていた。

　今日の丹菜は、いつものキャスケットの帽子を被って、ミニスカートとニーハイソックス……なんかエロいな。トップスも薄手のボアジャケットだ。いつものオシャレ丹菜だ。

「待ったか？」

「待ってないですよ。なんだかデートの待ち合わせみたいですね。ふふ」

「そうだな。―――今日も服、可愛いな。似合ってるよ」

　丹菜は嬉しそうに「デート」と言った。ならここは否定はしない。そして、周りにはからかう輩もいない。なので服装も素直に褒めた。

　正解だったようだ。嬉しそうに照れてる。―――よかった。

「で、どっか寄るところとかあった？」

「全然無いです。ホントに帰るだけでしたから―――そうですね……ゲームセンター行ってみたいです」

　俺はカラオケ同様ゲームセンターも行った事が無かった。

「いいね。実は俺、行ったことが無い」

「へへ。実は私もなんです」

　カラオケ同様、ゲーセンも行ったことが無いのか……。

　ゲーセンに向かう道中、丹菜に聞いてみた。

「丹菜って、カラオケの時も思ったけど、放課後、友達とこういうところとか行ったりしないの？」

「行ったこと無いです。家事やると結構時間取られるので……あ、正吾君の事を言ってるんじゃ無いですよ。正吾君のお世話は寧ろ……ｺﾞﾆｮｺﾞﾆｮ……」

「なんか、悪いな……いや、有り難う……だな。―――あのさ、本当に無理なことは無理って言ってくれよ。昨夜なんて疲れて寝ちゃったんだろ？　倒れられたら、申し訳無い気持ちしか残んないからさ」

「分ってます。昨夜は文化祭の準備もあったからだし、普段は全然苦にすらなってませんから」

「―――わかった。その言葉、信用するよ」

「信用して下さい。ふふ」

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　ゲームセンターに着いた。

「結構、音、うるさいですね」

「そうだな。ライブハウス程じゃ無いけどな」

「―――あれ、陽葵ちゃんと大地君ですよね？」

　お？　あいつらもデート中か……空は……さすがにいないか。