第8話 魔女の真意

アリスの作ってくれた杖のおかげで、私は魔法が使えるようになった。学校の休み時間中は、常に中庭で魔法を繰り出している。オリジナル魔法はどれも欠陥があることが分かり、授業中はそのノートの内容を見直す時間に当てている。今までは誰も、私のオリジナル魔法を試してくれなかったから、実演することで初めて知れることも多かった。


私は今、輝いている。


「まさか、本当に魔法を使えるようになるとはな」

「びっくりだよねー」


昼食も食べずに自主練している私の近くで、トキとミオが感嘆の声をあげる。今日は二人とも、私が誘った訳ではない。ミオはともかく、トキは勝手にそこにいた。ただ、アリスの技術について興味があっただけらしい。


「とにかく、これで僕がいなくても魔法の練習ができるな。限界まで魔法を出すのは、もうコリゴリだ」

「何言ってんの。私はまだまだひよっこ。普通にすらなれていないよ。これからも指南のほど、よろしく頼む」

「勘弁してくれよ……」


口ではそう言っているが、そこはお人好しなトキ。しつこく誘えばいずれ快諾してくれる。いい友人に恵まれているなと思う。


ふぅ、と練習がひと段落ついたのでミオが座っているベンチの隣に腰掛ける。


「あれ、もうやめるのー?」

「やめるというか、限界がきた」

「まだ5分しかたってなくないー?早いねー」

「煽りに聞こえなくもないな」


ふふっ、とトキが笑う。


「あー。なんか杖の仕掛け的に、短い間しか魔法が使えないらしいね。体の周りにバリアみたいなのができてるって前に話したじゃん」


うんうん、とミオが頷く。トキは芝生の上であぐらをかき、何か考えるように腕を組んでいる。


「そのバリアがあるうちは、魔力を集めることができないんだってさ。だから、バリアを張るまでに吸収していた魔力量分だけでしか、魔法を扱えないらしい」

「なるほど。ガス欠になるってことだな」

「そういうこと」

「ガス欠自体は普通の魔法使いでも起こることだが、マホはそれが顕著なんだな」


そのことをアリスに話し、なんとかならないかと相談したのだが、自分で何とかしろと言われた。改善案は自力でなんとかするしかない。


「そういえばさー、なんでアリスはマホに、そこまでしてくれるんだろー」

「働きが良かったからじゃない?実際、そう言われたし」

「うーん、それだけなのかなあ」

「何が言いたいの」

「マホの話でしかアリスのこと知らないけどー、そんなに優しかったっけ。て思って」

「……気分が乗っただけな気もするが」

「でも、ミオの勘は結構当たるよね」


言われてみれば、私が前のめりになりすぎていただけで、アリスは私が思っている以上に意地悪なやつではないような気もする。現に、私が魔法を使えるようになるまで、ちゃんと面倒を見てくれた。時間を割いてまで、杖を作ってくれた。


気になる。彼女の真意が。もしかしたら、もっとワクワクできるような秘密を隠しているかもしれない。


「今度会った時、ちょっと聞いてみる」


そう言って私は立ち上がる。昼休みが終わるまで、あと5分。限界まで魔法の練習をすることにした。

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