第5話 そして私は夢を見た

今でも覚えている。あれは私が5歳の頃だった。


ミオとトキと一緒に公園で遊んでいた。もちろん、幼稚園児だけでは危ないので、それぞれの親も動向していた。砂遊びに飽きた私たちはボールを蹴りあっていた。


三角形の線を描くように、順番にボールをパスし合う遊びだ。確か、トキだったか。私にパスするはずが、勢いあまって公園の外まで飛ばしてしまい、道路まで転がっていった。私はそのボールを追いかけるのに必死で、周りが見えていなかった。


「マホ!!!」


お母さんがそう叫んだ時には、遅かった。道路までボールを取りに行った私の真横には、それなりのスピードを出した車が突っ込んでいた。

あ、しんだ。子供ながらにそう悟った私は目をつぶり、衝撃に備えた。その衝撃はついぞ来ることはなく、車は私の真上をアーチ状に飛び越えた。


まほうだ。誰の魔法だろう。キョロキョロと辺りを見渡すと、歩道に若い男性が立っていた。その人は杖を取り出しており、胸を撫で下ろしていた。


「あ、ありがとうございます」


震えた声でお母さんと一緒にお礼を言う。


「間に合って良かったです」


そう言い残して、男性は何事もなかったようにその場を去った。


私もああなりたい。キラキラと輝いた存在になりたい。


今思えば、よくある出来事だ。いや、よくあっては困るのだが。私が魔法使いに憧れるようになる導入としては、なんともありきたりだ。しかし、夢なんていうのは、そういう幼少期のちょっとしたきっかけで生まれるものだろう。私は選ばれた人間でもないのだし、これぐらいがちょうどいい。


夢を見る理由としては、足りるぐらいの体験だ。

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