第12話

 駅で待ち合わせ、電車で2時間の移動だ。

二人でこんなに遠出するのは初めて、少し緊張気味でぎこちない。

どうなることかと思っていたが、電車の中では二人共寝てしまった。

きっと碧も昨夜眠れなかったんだと思うと、自然と微笑んでしまう。


駅に着いたら昼食を取り、今回の目的地である図書館へ向かった。

碧も私も行ってみたいと思っていた図書館だ。


 着いた図書館は、佇まいから威厳があった。

散々調べて来たのだが、実物の存在感は圧巻だ。

一歩足を踏み入れたときに、鼻をかすめる古書の匂い。

静寂の中に身を置いていると、そこにいるだけで時間の流れを忘れそうだ。

まるでその場所だけが時間が止まっているかのように。


 図書館の中は利用者に分かりやすく展示されており、その並びは美しかった。

その美しさから、本がいかに丁寧に大切にされているか伝わってきた。

いつかこんな図書館で働いみたいと思った。


 私達は、明日までに読める本を選んで借り、ホテルへと向かった。


ホテルでは、少し辺りを散策し後は部屋でゆっくりと読書をしたり、おしゃべりをして過ごした。

部屋は広く大きなソファーが有り、ゆったりとしていたので夕食もルームサービスで済ました。

 

 あっという間に日が暮れた、外は怖いほど漆黒の闇。

私は照明を落とし、再度外に目をやった。

すると海面に月が反射してキラキラと輝いて、とても幻想的だった。


 その時、部屋のチャイムが鳴った。碧はドアに向かった。

「目を閉じて待ってて。」

私は言われた通り、きゅっと目を閉じて待った。

扉が開く気配。


「いいよ。」

そっと目を開けると、そこには暗闇に蠟燭の炎が揺れるクリスマスケーキがあった。

「メリークリスマス、栞奈」

渡された小箱には緑のリボンが掛かっていた。中には四葉のネックレスが入っていた。

「わぁ!可愛い。」

「栞奈のラッキーアイテムでしょ。」そう言って私の首にかけてくれた。

そして、優しく後ろから抱きしられ、彼の唇が私の首筋にそっと触れた。

「愛している、栞奈。君が傍にいてくれるから、俺は幸せな時を過ごしている。

でも栞奈には辛い思いをさせている。ごめんな。」


「蒼、私は幸せよ。こんなに誰かを愛おしいと思う気持ち、愛されていると感じること。全て初めてで、全てが愛おしい。ありがとう。」


そして、私は用意しておいたプレゼントを出した。

「メリークリスマス!」

彼は丁寧に包み紙を取り、とても嬉しそうにプレゼントを開けた。

「アクアマリン、俺の誕生石だな。ありがとう。」

碧は自分のピアスを外し、アクアマリンのピアスを着けてくれた。

「どう?」

「うん、碧の金髪から除く水色が素敵。」


  私たちは、抱き合って初めて深いキスをした。

今までの触れるような優しいキスではなく、相手の全てを欲するような、奪い取るような深いキスだった。碧の心臓の音と私の心臓の音、どちらの物かも分からないほどに溶け合っていた。

私達はその晩寄り添って眠った。


その晩、碧がキス以上私に触れることはなかった。

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