第11話

 それから、私達は残された時間を楽しいことで彩って過ごそうと決めた。

学校帰りのカフェや映画、人生初めてのカレカノは日々発見の連続だ。

少しずつ距離を縮める二人。繋ぐ手の温かさ、触れる指先の冷たさ。

「栞奈」と優しく、そして少し甘さを含んで名前を呼ぶ彼。

私は何度呼ばれても慣れない甘い声に、気恥ずかしさを隠しつつ「碧」答える。

くだらない冗談や楽しい時に笑いしかない。

知らない人が見たら、どこにでもいるHappyな二人だろう。


 でも彼が発作を起こす度、私達は普通と違うと思い知らされる。

しかし、そんな時間も愛おしい。彼といる時間全てが愛おしかった。

こんなに誰かを愛おしいと想う日がくるなんて、凄く幸せで、凄く不幸だ。

失う日がそう遠くないと分かっているから。


 夜、一人になると急に恐怖が襲ってきて泣いた。子供のように布団を被って大声で泣いた。

幸せな分怖かった、誰かに助けて欲しかった。

そんな時決まって、蒼が電話をくれた。

泣いていたことばバレないように一生懸命取り繕うがきっとバレている。

それでも、彼は楽しい動画を送ってくれたり、面白い話をしてくれたりして私の気持ちをHappyにしてくれた。

きっと私以上に怖いはずなのに、そんなこと微塵も見せず。



 いよいよ、明日はクリスマスイブだ。

私達は、近づく終わりを感じながら、見ないふりをして過ごしていた。

多分、最初で最後のクリスマス、二人で過ごそうと友達にアリバイ工作を頼んだ。

二人で相談して、海が見えるホテル静かなホテルを予約した。

 

 そして碧へのクリスマスプレゼン選び、悩みに悩んでアクアマリンのピアスを選んだ。アクアマリンは彼の誕生石だ。

何処にいても私を身近に感じていて欲しくて、ピアスにした。

プレゼンOK、お泊りセットOK、アリバイOK、私は何度も寝返りしながら少し眠った。

 

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