第10話 He Side

 放課後、無人の教室で栞奈を待ちながら、外を眺めていた。

冬空は俺の心を投影したかのように、澄んでいる。


 俺が空をよく見るには理由がる。

幼い頃から入退院を繰り返していた。

病院のベットの上で見える外の世界は『空』だけだった。

空は季節や時間で表情を変える。

空は俺に時間の経過を感じさせる、それはとても不安なものだった。

しかし、俺は今日も生きていると実感するかのように空をみる行為をやめれない。


 栞奈には参ったな完敗だ。俺の強がりなんてすべてお見通しだった。

栞奈が一歩を踏み出してくれたおかげで、俺は残された時間を幸せに過ごすことができそうだ。自分の気持ちを隠さないで良いと思うと清々しい気持ちになった。

彼女に対する好意を隠す必要がない、思いっきり溺愛していいのだ!


 しかし、彼女が本当にそれで幸せかどうかは疑問だ。

俺がいなくなった後、彼女の負う傷が軽いことを願った。

少しでも彼女の悲しみを軽減させたかった、そう考えたら俺にできることは『辛い別れにはしない』ということしかない。


 彼女に思いを馳せながら彼女の席に座った。

栞奈の机の上に本が一冊置いてあるのが目に入った。

俺はそっと手に取った。図書館で借りた本からは、古書の匂いが鼻をかすめた。

彼女らしいなと思い、ふと心がフワっと温かくなった。。

何を読んでいるのだろうか?ふとパラパラとめくった拍子に何かが落ちた。

慌てて拾うと、それは四葉の栞だった。

この栞には見覚えがあった。

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