第9話

 それから、何度無視されても、乾君に向かっていった。

クラスでも躊躇なく彼に話かけた。冬休み前、彼はとうとう根負けした。


 乾君は放課後、閉館間際の図書館へやってきた。

「三木、お前やりすぎだよ。節度ねぇのかよ、皆ドン引きよ。何?どうしたいの?」

「私は前に言った通り、乾君と一緒にいたいのよ。」

「なんでだよ、俺が発作起こすの見て怖くなったんだろ?そんな奴に干渉されるのは正直、迷惑なんだよ。」彼は私から視線を反らしながら言った。


 私は決めていた。彼が離れていこうとするのなら、私の『想い』を伝えてしまおうと。栞の挟まった本を抱きしめ、勇気が欲しいと願った。


 私は彼の瞳に映る自分の姿が見えるのではと思うほど距離を縮め、彼を真っすぐに見つめ言った。

「だって、私は乾君が好きだから。どんな未来が待っていたとしても君の傍にいたい。」

「『どんな未来が待っていても』って本気で言ってる?

 お前にどんな覚悟があるんだよ!こんな無意味なことやめろよ。」

「覚悟はある。例えHappyEndが待っていない未来だとしても、私は君に寄り添いさえできれば、幸せなの。

私の幸せの価値を君に決めつけられるのは、不愉快よ。」


 根負けしたのか、今にも泣きそうな笑顔で彼は言った。

「嗚呼、気が付いているんだね?俺に許された未来の時間は、君より確実に少ない。

 一緒に刻める時が短くても、許してくれる?」

「もちろん!!嫌がられてもずっと傍にいる。」私は満面の笑顔で言った。

彼は今まで見たことが無いくらい怖い顔で

「これだけは約束して欲しい。俺の『最後』はお前に見せたくはない。

俺が『ここまで』と思ったとこまでだ、それ以上は無い。」


これは呑むしかない要求だ、私は頷いた。


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