第14話

 今日は何十年に一度と言われる大雪の天気予報だ。

夜中から降り始めた雪は朝には、すっかり見慣れた風景を変えた。

一面の銀世界は余りにも日常からかけ離れていて、夢の続きのようだ。


まだ、誰の足跡もない新雪をギュッギュッと踏みしめながら私は学校への道のりを歩いた。


 昨夜の電話で、碧と学校で待ち合わせの約束をしていた。

「大雪なら雪遊びをしないとな、大きな雪だるまを作ろう。」と約束した。

ずっと入退院を繰り返していた彼にとっては、初めての経験のようだ。


 たまに自分の足跡を振り返りながら、ひたすら学校への道を歩いた。

余りに人がいなくて、世界中に私だけなのかもと不安になり始めた頃、前から人影が向かってくるのが見えた。

直ぐに気が付いた、碧だ!私は駆け寄った。

何度も雪に足を取られそうになりながら、それでも無我夢中で彼を目指した。


「おはよ!」

「おはよう!じゃない。危ないよ栞奈、ゆっくりで大丈夫。」

「だって、嬉しくて。」


 校庭に降り積もった雪は、人の足跡一つ無かった。私達は雪だるまを作り始めた。

校庭の土が混ざって綺麗ではないが、満足のいく大きさになった。

私はカバンから人参と松ぼっくりを出した。

「はい。」と碧に渡す。

「何?どうすんの?」

「目と鼻にするのよ。」

彼は愉快そうに受け取り、雪だるまに鼻と目を付けた。

近くに落ちている小枝を拾って、手やら口も付けて雪だるまの完成だ。

 

 碧は雪だるまの写真を撮っていた。

「楽しい?碧。」

「うん、こんなに雪遊びが楽しいなんて、初めて知った。また遊びたいなぁ。」

「そうね、また遊ぼう。」私は急に楽しい気持ちから現実に引き戻された。

何かを察知したのか

「十年後こんな雪が降ったらまた、学校で逢おう。」彼は約束した。

「本当?」

「うん。」碧は笑って頷いた。


 少し休憩しようとベンチに腰掛けた時、急に彼が苦しみだした。

いつもの発作よりかなり苦しそうだ。

「病院へ行く?タクシー呼ぶ?」

「悪い、救急車呼んで。多分俺、歩けない。」

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