第7話 He Side

 ヤバイ、とうとう三木に勘づかれた?!

俺は帰りの電車で、行き場のない焦燥感に襲われていた。

 

 落ち着け、落ち着け、そう自分に言い聞かせながら自らの手を見ると、震えていることに気が付いた。震える手を見つめながら、俺は考えを巡らせた。

 どう考えても行くつく結果は一つだった。

ああ俺は、彼女を失うのが怖かったんだな。彼女が事実を知って、俺から離れていくことが。昨日までの満ち足りた気持ちは微塵も残っていなかった。


 もう自分の気持ちに蓋をすることはできない、認めるしかないな。

俺は恋したんだ。残された時間は僅かなのに、今更『初恋』か。力なく笑った。


 俺に残された時間を、彼女と時を過ごせたらどんなに幸せだろう。

それと、同じくらいの恐怖を感じた。彼女を残し去り行く自分に。俺のいない未来に誰かと時を刻む彼女に。


 そろそろ、潮時だな。俺のエゴで彼女に苦痛や悲しみを与えることはできない。

彼女が大事なら、ここは距離をとるべきだ。

自分に言い聞かせ、外に目をやった。

窓から見る冬空は灰色の雲に覆われていた。

まるで、今の俺の気分だ。


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