第7話 He Side
ヤバイ、とうとう三木に勘づかれた?!
俺は帰りの電車で、行き場のない焦燥感に襲われていた。
落ち着け、落ち着け、そう自分に言い聞かせながら自らの手を見ると、震えていることに気が付いた。震える手を見つめながら、俺は考えを巡らせた。
どう考えても行くつく結果は一つだった。
ああ俺は、彼女を失うのが怖かったんだな。彼女が事実を知って、俺から離れていくことが。昨日までの満ち足りた気持ちは微塵も残っていなかった。
もう自分の気持ちに蓋をすることはできない、認めるしかないな。
俺は恋したんだ。残された時間は僅かなのに、今更『初恋』か。力なく笑った。
俺に残された時間を、彼女と時を過ごせたらどんなに幸せだろう。
それと、同じくらいの恐怖を感じた。彼女を残し去り行く自分に。俺のいない未来に誰かと時を刻む彼女に。
そろそろ、潮時だな。俺のエゴで彼女に苦痛や悲しみを与えることはできない。
彼女が大事なら、ここは距離をとるべきだ。
自分に言い聞かせ、外に目をやった。
窓から見る冬空は灰色の雲に覆われていた。
まるで、今の俺の気分だ。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録(無料)
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます