第6話
夏が終わり、私達の距離は少しずつ縮まっていた。
相変わらず教室では話さないが、放課後に乾君が図書館に来る頻度は増えた。
今では少しずつ互いのことを話すようになっていた。
彼も小さい頃から図書館へ行っていたようだ、彼からにじみ出る図書館好きオーラに納得した。
そして、私は胸の中に芽生えた小さな『想い』に気付いていた。
でも決して言葉にしてはならない、彼の居場所を奪ってはならない。彼の傍にいることすら出来なくなるくらいなら気づかない方が良いとしまい込み、クラスメイトに徹した。
季節はあっという間に冬、その頃になると乾君の発作の回数は明らかに増えていっていた。ある日、閉館間際の図書館には私達二人だった。
帰り支度をして彼を探すと、発作で苦しんでいた。
何度経験してもいつも冷や汗が出る。万が一発作が治まらなかったらどうしよう。
彼に何かあったら、どうしよう。いつも不安だった。
でも、それは発作を起こしている乾君の苦しみと比べたら、言葉にするのもはばかられた。
いつものように背中をさすり発作が治まるのを待った。
そして私は意を決して、発作が治まった彼に詰め寄った。
「明らかに増えてるよね、発作の回数。本当に大丈夫なの?」
「寒いからから、増えてるんだよ。」
「でも、最近は遅刻も早退も多いじゃん。」私は震える声を悟られないように、早口で言った。それはまくし立てるように聞こえたのたのかもしれない、彼はイライラしながら言った。
「発作が増えたから、病院へ行っているだけだよ。春になったらまた減るって。」
そう言った彼の顔は以前より痩せていた。
私は意を決して「ねぇ、本当に何か私に隠していない?正直に言って欲しいの。言ってくれないと・・・」
「正直に言わなかったら、何なんだよ。」
私は彼を睨んで
「皆に言うから。」
「お前!約束したんじゃん。」
「約束したよ。でも乾君、何か隠しているよね?」
「何も隠してない!うるさいな。いいよ、もう図書館には来ない。」
そう言い放って、乾君は出て行った。
「待ってよ!」彼は私の声に背を向け出て行った。
私は彼を思って涙した。こんなに大事なの何も伝えられない。
何も伝わらない。
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