第7話 スキルと神の加護②
「次は『加速』ですね」
これに関してはそのままじゃないかなぁ?というか何を加速するんだろ。物体の動きとか?
「まずはやってみるか」
俺はいつも肌身離さず持ち歩いている
「『加速』!…わっ!?」
振り下ろされた斧は、風を切る音と共に地面を容易く切り裂き、衝撃波が出て土煙が舞う。
「アルス!」
「問題ありません!」
父上の心配する声が聞こえたのでダークアックスで煙を切った。
「特に変化はないな?」
「はい。予想通り、物体の動きを加速させるスキルです」
「ふむ…、効果範囲がどのくらいになるのかが注目点だな」
「とりあえず触れている物は確実ですね。こんな感じで」
俺は土を少しだけ掴む。
「『加速』」
「うむ?…土が小刻みに揺れているな。斧も同様か?」
「振動は伝わってきていたのでそうかと思います」
…何に使えばいいんだコレ?一応使い道はあるけど本当に地味だな。
「意外と使い道はあるかもしれん。これから探していこう!」
「はい!」
父上から励ましの言葉をもらったところで、ついにあれの検証に移る。
「最後に神の加護ですね」
「ああ。お前の授かった物は『太陽の神眼』だ。神眼は、初代国王アルフォンス陛下の記録によれば様々な効果があるそうだ。」
「そうなんですか」
…あの太陽神から伝えられているというのは黙っておこう。
「そして、神の加護にはそれぞれの神の力の行使ができるというらしいのだ。初代陛下は氷神、氷を自在に操ることができた。お前は太陽神。もしかしたら…」
「分かっています。そこはまず確かめましょう」
俺は父上から十分に離れて気合いを入れる。
「……よし」
覚悟はできた。何をするべきかも
「『
「……!」
父上の息の飲む音。俺の両目に太陽神の紋章が浮かび上がり、光り輝く。
「『
世界の情報が入ってくる。目に見えるのは家を焼かれ泣き叫ぶ子供、奴隷のような扱いを受ける人、ドワーフやエルフに獣人、火の海と化した戦場で戦う兵、抵抗虚しく乱暴な兵によって犯される女性、痩せこけていて碌に食事も摂っていないだろう働かされている男たち。
とてつもない情報量が体を突き抜けていく。そして脳を焼かれるような、全身の神経を傷つけられているような痛みが襲ってきた。
「あああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああ!!」
「!?アルスッ!」
痛い、辛い、苦しい、何で、どうして。ただそれだけの感情が心を埋め尽くす。それを体現するかのような血涙が両目から出てくる。
『今感じたのは全てこの世界で起きていることだよ。さあ、どうする?』
「ぐあああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああ…!」
「アルスッ!大丈夫か!?返事をしろ!」
痛みの中で、かすかに聞こえたのは確かにあの
◇
「うぅ…」
「気を失っている…。が、呼吸はできているな」
ルイは気を失ったアルスを抱き留め確認する。先程までの叫びは信じられないほど消え去り、目を閉じている。ルイはアルスの血涙を
「兵舎の医務室に行こう」
医務室は公爵家の屋敷の外、騎士の住む兵舎、もはや城だが、その中の一角であったり、町の防壁辺りであったり、主に騎士がいるところに点在している。そこには公爵家お抱えの優秀な医者がいるのだ。
ルイは訓練場を抜けていく中で考える。訓練場と兵舎は騎士が簡単に出入りできるように近く建ててある。
「どうなっている?代償はこんなに大きいものだったのか?」
初代国王が初めて神眼を発動したときの様子は文献に記されている限りだと、まったく苦しんでいなかったと言う。
「個人差か…、はたまたすでに誰にも見られず使用していたか…」
だがルイは余計なことを考えている暇じゃないと思い、雑念を頭から追い出す。
「シルト!!いるだろう!!」
「あーはい!今そっち行きます!」
そう言って長い廊下を駆けてきたのは、黒い肌が特徴的なエルフの男、いわゆるダークエルフのシルト。
彼は長いことここで医者をしており、幅広い知識と回復魔術を有している。ルイからも厚い信頼を得ている凄腕だ。
「アルスを置かせてやってほしいんだ」
「アルス様を?」
ルイは背負っていたアルスをシルトに見せる。
「…こちらへ」
「ありがとう」
ルイとアルスが通されたのは奥の方の部屋、ほかの部屋と違い少し豪華である。アルスはベッドに寝かされ、シルトは問いかける。
「いったい何があったんです?」
「わからん。だが、神眼を発動したときにとても苦しんでいた。今は落ち着いたようだが」
「神眼を!?…そうなると前例がありませんね。珍しいもの……珍しいでまとめられないですが、初めて見ますし。とりあえず今は寝かせておきましょう。経過観察もしっかりしないといけませんね。身の回りのことはなるべく僕がやりましょう」
「ああ。だがこちらの侍女を向かわせよう。そっちに任せっきりだと負担になるだろうしな」
「お気遣いありがとうございます」
今後の対応が決まると、シルトは記録用紙などを取りに部屋を出る。残されたルイは寝ているアルスの顔を撫でながら物思いにふける。
「アルス…早く元気になってくれよ」
果たしてその思いは届くのか?
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あとがき
すみません。やっと更新できました。
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