第6話 スキルと神の加護①
「アルス、よく聞くんだ。神眼を持った者が出るのは、この国で実に二百二十六年ぶりなんだ」
「ええええ!!」
そんな凄い…凄いのかよくわからないけど、とりあえず良いのか悪いのかを聞きたい。
「あの、父上」
「どうしたんだ?」
「悪いこと…なのですか?」
そう尋ねると、父上は少し不安の色が混じった顔を浮かべて言った。
「悪いことではないのだが、少し心配なんだ」
「何故です?」
「神眼…それも両目にというのは、今まで聞いたことが無い。神眼を持った者が出るだけでも、国中が騒ぐ程のことなんだ」
「なるほど…」
確かにそれは凄そうだ。というかそんな説明あの神から聞いてないぞ?本当に
そんな怒りを抱えていたが、先程まで膝をつき祈っていた神父さんが話し始めた。
「これは大変喜ばしいことです!皆さまが話したくなるのは分かりますが、しかし、今はまだ
いや、神父さんも俺を見て泣きながら祈ってたよね?俺もそう思うけど、急にそんな真面目に…
その言葉は少しざわめいていた教会の中に響き渡り、周りの人は「まあ…確かに」「そうだわ」と賛同し始めた。
「ふむ…《大司教》よ、場所を移すべきだろうか?」
「ええ。これは重大なことですし、神のご加護を受けたとなればそれは国家機密に値するものですから」
「よし。アルス、二人とも、少し奥の部屋へ行こう」
「は、はい父上」「うん!」「わかったわ」
そして俺たちは祭壇?の奥のドアに招かれた。
ドアを開けると白い壁が特徴的な部屋が広がっており、真ん中にある高級そうなソファに父上が座り、手招きをされたので俺も座った。
父上は俺が座ったのを見て、大司教さん(神父さん、司祭だと思ってた)に問いかけた。
「大司教よ。何が見えた?」
「……【太陽の神眼】、そして――【太陽】が与えられております。」
「なんだって!?」
ガタッ、とそんな音が聞こえてくるかのように父上は勢いよく立ち上がった。
「ああ…いや、すまない」
「いえ。当然のことでしょう、無理はありません。」
……さっきから何に驚いているのか分からない。何なんだろう?母上も深刻そうな顔をしているし。……アイは当然ながら変わらず可愛いな。
「アルス。お前に大事な話がある」
「なんでしょう…?」
「その神の力というのは、人の手には余るものだ。そして力を行使するごとに大きな代償を伴う。だからむやみやたらに使わないと約束してくれ」
「しょ、承知しました」
いつもは優しい父上がこんなに釘を刺すなんて……。もしかしたらもらったのは間違いだったかもしれない。
後悔の念を抱いていると父上は大司教さんの方へ向き直り、二人で話し始めた。
「加護を授かったのは公表するのだろう?」
「はい。
「よし……。ならばいい!」
父上はいつものようにニカッ、と笑って見せて俺たちを安心させてくれた。
「アルス、二人とも、心配をかけてすまない!」
「いえ、大丈夫です!自分の力がどういうものなのかよくわかった気がしますし、何よりみんなに心配をかけないか不安で……」
「「大丈夫!!」」「……だいじょぶ!」
「はは……良かったです」
やっぱり父上と母上は大丈夫と言ってくれた。アイは何が何だかわからないらしいけど。まあしょうがないね。
そこで俺と父上はここに来た理由を思い出す。
「そうだアルス!儀式の結果を知りたいだろう?」
「はい!もちろんです!」
「よし!神父よ、結果を教えてくれ!」
ついにこの時が来た!俺は今とてもわくわくしている。さあさあどんなものが出るかな?
「はい。アルス様、あなた様のスキルは【明鏡止水】と【加速】になります」
……何だそれ?
◇
太陽神との思わぬ出会い(俺しか知らない)や、スキルの結果が分かったところで俺たちは屋敷に戻った。
そこで今、父上や公爵家に仕える騎士団【金獅子団】が訓練をするための訓練場に来て、スキルの効果と加護の力を試そうとしている。
中には大勢の騎士がいて、剣で手合わせをしていたり魔術の撃ち合い…撃ち合い?騎士なのに?二刀流ってことかな?
父上と俺が入ってきたことで騎士達は訓練を止めるが、父上が「大丈夫だ、続けてくれ!」と言うとまた喧騒は戻っていった。戻るの速っ!!
「みんな動きが凄いですね!」
「ああ。【金獅子団】はこの国最強の騎士団としての呼び声が高いからな。凄い奴らが集まっているんだ」
「成る程!」
しかし、言われてもまだ他の騎士達を見たことないし、分からないな。これからもっと勉強しないと…。
そんな風に考えていると、一人の銀髪イケメン騎士が近くに寄ってきた。
「ご当主様!如何なされましたか?」
「今日も励んでいるな、ジークよ」
「勿論でございます!先のいざこざがあったことで、新入りも自信がつき精一杯訓練しております!」
「そうか、これからも頑張ってくれ」
「はっ!」
…今の人、凄い魔力量だし隙がない。多分この騎士達の中で一番強いんじゃないかな?
「父上、今のジークという騎士は…」
「彼はこの【金獅子団】の副団長、ジーク・カイエルだ。剣術、魔術共に優れた騎士だな。あいつは双剣使いでな、常に最前線へ行き道を切り開き幾多もの戦場を潜り抜けてきた」
「ええ!?父上に?とてもお強いんですね…」
「うちの自慢の騎士だ!」
いや、本当に凄いな。世間知らずの俺から見ても父上は化け物だとわかるし、その名声はアスタニア王国の端から端まで届いていると言っても過言ではない。
……あれ?この人ですら副団長なの?じゃあ団長って、どんな人なんだろう。
「父上、金獅子団の団長って誰なのでしょうか?」
「俺だ!」
「父上なんですか!?」
「もちろん!」
……最近よくある名誉会長みたいな地位なのかな、と思ってしまったけど、父上ほどの強さなら納得できるな。
訓練場の奥には、少しだけ頑丈そうな部屋が何個かあった。俺と父上は中に入る。ここで確認をするのかな?
「この部屋はスキルの訓練を行うための部屋だ。魔術結界が何重にも重ねてある」
「なるほど」
「アルスの貰ったスキルは今まで聞いたことが無い。だから少しだけ試してみよう。スキルは名前を意識しながら言葉に出すと発動する。俺がついているから安心して使ってくれ」
「わかりました!」
さて、俺の貰ったスキルは【明鏡止水】と【加速】。スキルの効果を予想すると【明鏡止水】は多分集中力を深める?感じで、【加速】はもうそのまんまだと思う。
…よし、早速やってみよう!
「いきます!」
「ああ!」
「『明鏡止水』!」
スキルの名前を叫ぶと同時に、スキルが発動する。
「っ…!?」
何だろうこれは…精神が研ぎ澄まされているような、一気に自分の考えが表に出てきているような。騎士の剣が空間を切る、ビュンッという音。魔術の構築音。父上の息遣い。外の鳥のさえずり。その全てが耳に入ってきて、聞き分けることができる。それが何なのかも理解できる。
「ふう…」
俺はスキルの使用を止める。うーん、時間が遅くなった?自分の見る景色がスローモーションになっていた気がする。戦闘に有用なスキルだと思うな。
「どうだった?」
「予想していた通り、集中力を高めるものです。発動すると時間の経過が遅くなるような感じがしました」
「ふむ…」
父上は何か考えるようにしている。本当はもう少し先の思考の領域に入れそうだったんだけど、今はスキルと加護の確認が先だ。
そう考えた俺は次のスキルの確認に移った。
————————————————————
あとがき
ほんっとうに申し訳ありません。お待たせしました。出来れば今後も応援よろしくお願いします。
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