ミッション

 昼休み、鹿乃(かの)君が突然話しかけてきた。

「先生、今日おかしいです」

 私は驚いてしまって、何も言葉が出ない。

「え?いやいや」

「デートの予定があるんじゃないの?」

 と、鹿乃君の背後から青井さんが顔を出した。

「え!先生彼氏いるんすか?」

 鹿乃君だけでなく、クラスの男子達が騒ぎ始めた。

「いやいや、違うよ、違うからね」

 この慌てている様が大好物なのだろう。と、なんとなく気付く。

「あ」

「四組、楽しそうだなぁ。俺も混ぜてよ」

 教室の前のドアには、その人がいた。

「あ、小矢先生!今日小豆沢先生、デートなん

 ですって」

 一人の生徒が、その人に向けて言う。

「いや違くて…」

「デート?小豆沢先生、今日俺とラーメン食べ

 に行くんだよ」

 淡々と言う。こうなるとは分かっていたけれど。

「なんだ、そうなんだ」「つまんねぇの」

 と、男子達は吐き捨てる。

「だから言ったでしょ」

 私は中学生相手に勝ち誇った顔を見せる。

「先生、良かったですね」

 目の前で青井さんにそう言われ、私はその顔を少し赤くしてしまった。

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