昼
給食は美味しい。調理師さんたちのプロの味を毎日食べられるなんてこの上ない幸せだ。
「牛乳おかわりする人ー?」
いつもの四人の手が挙がる。
「じゃんけんするよ」
いつもの四人といつものじゃんけんをしようとした。その時だった。
「失礼しまーす」
前のドアから小矢先生が入ってきた。
「このクラス、牛乳飲む人います?」
二本の牛乳をケースに入れて持ってきてくれた。
「ありがとうございます、ちょうど今…」
手を挙げている生徒を見て察したのか、私の声を聞いているかどうか分からないまま、もう牛乳を配り始めている。
「そういえば、吹部の人たちちゃんと食べて
る?」
うちのクラスには吹部が三人ほどいる。
「あ、吹部…」
林田(はやしだ)君が「おかわりしましたよ」みたいなことを言ってクラスが盛り上がっているようだ。
「じゃ失礼しました」
そう言って、自分のクラスに戻っていく小矢先生を私はずっと目で追っていた。
「先生?」
私の目の前に座っている青井(あおい)さんがこちらを見て言った。
「ん?どうした?」
「先生って小矢先生のこと…」
私の顔で何かを察知したかのように、ニヤニヤしながら言葉を止めた。
「いやいや、そんなことは…」
明らかに動揺してしまっている。
「いいです。それ以上は」
私は「いただきます」と手を合わせ、給食を口いっぱいに掻き込んで誤魔化した。
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