タイプ
私に休日は少ない。土日も部活動があったりその後仕事が残っていたりすると職員室に入り浸るからだ。そんな私も夏休みや冬休みといった長期の休みのときには有給休暇を取得する。
「唯さん!お久しぶりです」
晴れ晴れとした冬の昼下がり、縁側で父と将棋をしている椿原さんが言った。
「あ、どうも」
休日の過ごし方をよく知らない私は特にする事もなく、二人の対局を眺めていた。
「椿原君、何歳になったんだっけ?」
父が桂馬を動かし、歩を取ったところで言った。
「今年で三十五ですね」
椿原さんが歩を一つ前進させて答えた。
「もう三十五か。あれ唯は?何歳?」
手持ち駒をいじりながら、こちらを見て言った。
「二十六歳」
父は返事をする前に「参りました」と椿原さんに頭を下げた。父が弱いのか、椿原さんが強いのか、分からない。
「結構離れてるんだな。椿原君と」
「意外とね」「意外にね」
まさかのハモリに変な空気が流れて笑ってしまった。目の前で椿原さんも笑っていたので良しとしよう。
「あ、もうこんな時間か。父さん、おばあちゃ
んの家行ってくる」
おばあちゃんとは私から見た言い方であって父からしたら義理の母である。
「私も行く?」
そう言ったが父は拒んだ。
「あぁ大丈夫。すぐ帰ってくるし、唯も疲れて
いるだろう、ゆっくりしなさい」
私は「あぁうん」と返事をして、父を見送った。テレビでも観ようかとソファに座ると、椿原さんが紅茶を淹れてくれた。
「あ、ありがとうございます」
椿原さんは「いえいえ」と言いながら隣の小さな椅子に腰かけた。
「ちょっと相談してもいいですか?」
私は少しだけ勇気を出して言った。
色々なことを言ってしまったが、なぜか後悔はなかった。やはり言ってみるものだ。何を話したかは家族には秘密にしてほしい。
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