夢を見て?

 妹は変わっている。大学院生ではあるが就活生でもある。だがしかし、特に就職活動している様子はないし、焦っている様子もない。

「ねぇ鈴」

 鈴は「ん?」とスマホをいじりながら返事をする。

「鈴ってさ、就職…っていうか将来?どうする

 つもりでいるの?」

 数秒間の沈黙の後、スマホをポケットにしまった鈴は立ち上がり私の横に座った。

「これ誰にも言わないでほしいんだけど…」

 そう前置きされ、おもわず「うん」と答えた。

「会社を立ち上げようと思ってはいるんだけ

 ど」

「え?」

 予想外すぎる回答にマヌケな声が出る。

「それがまた難しくて、どこかに就職してから

 じゃ遅い気もするんだけど、絶対そっちの方

 がお金の面も安定はするじゃん?」

 私は淡々とそんなことを述べる妹を遮る。

「ちょ、ちょっと待って。私まだ、会社立ち上

 げようと…で止まってるから」

 そう言うと、少し驚きながら「あ、そう。じゃあ考える時間どうぞ」と言われた。思考が整うわけもなく、意味がよくわからないまま話を続行させた。

「…ってわけ」

 一頻り聞き終え、体がどっと疲れたのが分かった。でもここは姉として、背中を押すべきだと考えた。

「まぁお父さんとも相談しながらだと思うけど

 私は応援するから。うん、頑張って」

 なんてありきたりな言葉だろう。面白味の欠片もないではないか。そんな土曜日の夜、彼女は深夜の三時くらいまで起きていたみたいだ。何をしていたのかは知らないが、さっき語られたことは本当なのだろうか。



  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る