おもいまぶた
シルフィア・バレンタイン
第1話
とある昼下がりのこと
温く暖かい教室にわたしは眠りそうになっていた。
重くなったまぶたを必死に開けて、窓に触れる。
冷たい。
教室は暖房と人々の発する熱で温められていても、外は気温こそ二桁台でも、もう既に底冷えがひどく芯から凍りつく冬になっているのだ。
外界と直接的に触れている部分である窓が冷たいのは当然だし、離されている教室が温かいのも当然だ。
だけども、いやだからこそ眠くなるのかもしれない。
厳しく生きとし生けるものを冷やし尽くす冬の冷気から守られているという安心感!それこそが自宅学習を最低限にするかわりに授業には集中することをモットーにしているわたしを眠りへと誘うのだ。
眠りに抗うべく上を見上げてみれば、そこには色とりどりの白色が天井を割拠している。そこには眠っている色など存在せずにお互いがお互いの領域を拡げるために、合戦のようなものを行う様が見えたような気がした。
魅力的な構図ではあるのだが、その動きは遅々としすぎていてまぶたが重い今は睡眠を促進するものでしかない。
眠りに抗うべく横を向いてみれば、そこには頭の角度と姿勢がばらばらなクラスメイト達が見える。彼らは眠りという学生とは切っても切り離せないものと戦っている人もいれば、既に達観してしまったのか抵抗を諦めて眠りの園へと落ちてしまった人もいる。
寝ている人を見るのは楽しいし、寝ている人が数人であれば逆にわたしの目は覚醒してくる。
だけど眠っている人の数がある一定度合いをすぎると、今度はわたし自身も眠りへと誘われてしまうのだ。
不思議なものであるが、そういうものなのだ。
次は反対側、つまり窓側を見てみる。
直接的に、外とは一枚の透明な壁を隔てただけのこちらには雄大な自然とたまの鳥たちの肖像が映り込んでいる。
それはまるで一枚の絵のようで······不思議な安心感とともに来るのはわたしも空を舞う鳥になったような心地と一種の高揚感だ。
目は覚める。だけども覚めすぎて別の方向へと向かってしまうらしい。具体的に言えば自然をモチーフにした妄想の先だ。
結局わたしは前を向いて授業に集中するしかないらしい。
集中していればきっと、他のことを考えないようにはなっても眠ってしまい、貴重な一時間を棒に振ることはないはずだ。
わたしは少しだけ遅れていた教材のページを手繰り、落としていたシャープペンシルを回収して、少し強めに、でも痛くないくらいの強さで頬を叩き(集中するためのちょっとのスパイス)、前を向いて授業に集中した。
おもいまぶた シルフィア・バレンタイン @marine-mafuyu
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