第21話 それは君達の物だよ


「きゃぁぁぁーーーっ」


京子が全部完食した頃、悲鳴が聞こえてきた。


少女の絹を裂くような悲鳴だ。


「どうしますか? 瞳様、行くのですか?」


「行くの?」


「行かなくていいんじゃないかな?」


別に助ける為に行くんじゃない。


俺は確かめたいだけだ。


「誰か、誰か助けて下さい…お母さんが…」


「助けに来たぞ、ゴブリン位なら大丈夫だ…俺達に任せろ!行くぞ!」


「「おう!」」


先に冒険者が3人駆け付けたみたいだ。


だが…


「ひぃ…新手だ、ゴブリン処じゃないない…不味いぞ」


「上級魔物に少女の魔族に、その男は…何者だ」


冒険者達は俺達を見ると顔を青くした。


そうか…俺の仲間は…此奴らにとって…敵に見えるらしい。


「怖いよーーーっ! 助けてーーっ」


近くに母親が死んでいる。


此奴らは俺達にも剣を向け、少女は彼らに助けを求めた。


それなら、俺達は…敵だ。


別に俺達が『敵』と言ったのではない。


向こうが俺達を『敵』にしたんだ。


剣を向けられ怖がられたんだ…そう言う事だろう。


「ただ見ていただけなのに、剣を向けたんだから仕方が無いよな? 死ね…」


俺はただ拳を振り上げ殴った。


それだけで、冒険者の1人は簡単に立てなくなった。


「ぐわばっ…ぐはぁ、ぐわぁぁぁぁーーっ」


「お京、黒薔薇、黒牡丹…此奴らは敵だ。少女と母親の死体以外は殺して食べていいよ」


「解かりましたわ…頂きますわ」


「食べる…お肉」


「三体、結構な食べでがあるね」


この三人がたかが3人の冒険者に劣るとは思わない。


俺は…少女の方に行くか。


「いや、来ないで…来ないでよーーっ」


「お前は俺達を怖がった…だから敵になったんだよ?世の中、その一言で人生が変わる事があるんだよ。冒険者が剣を向けないでお前が怖がらなければ、違った未来があったのかもね?まぁもう無理だけどね…」


「嫌ぁ嫌ぁぁぁぁぁーー殺さないで」


「俺は殺さないけど…他は知らない(笑)」


さてと…


「うがぁぁぁう?」


『翻訳と…よう!』


『貴方様は…うがっ…邪神様の縁の方ですか。ああっ、邪神エグゾーダス様の眷属、勇者だ…我ら側の勇者様なのですか』


ゴブリンは俺に頭を垂れた。


見ただけで俺が眷属で勇者なのが解るのか…凄いな。


これでどちらが仲間か解ったな。


こっちが俺の仲間だ。


思った通り…俺の目には魔物は愛らしく映る。


俺が見せて貰った画像に映った魔物や魔族の姿。


それはまるで可愛らしいぬいぐるみの様な生き物だった。


それだけじゃない、それらに混ざって明らかに人間…人間の中に居た、辛うじて見える醜い人間じゃない。


この目になる前に見た…普通に何処にでもいる人間に見える存在がかなり居た。


このゴブリンは残念な事に人間には見えない。


だが、俺の目にはアニメや漫画の世界のコミカルな可愛らしいモンスターにしか見えない。


どう見ても悍しい化け物…ゾンビ以下の存在に見える少女とは違う。


だから、優しくなるのは当たり前だ。


『それは君達の獲物だ、持ち帰ると良いよ…見ての通り俺は人間だけど、君たちの味方だ。今は人の世界で暮らしているが、やがて旅に出る…その時は君達の仲間に会わせて欲しい』


『勿論です。我らが勇者様…強き魔物に魔族様方…あなた様方に最大の感謝を』


『『感謝を』』


翻訳が上手く行きだしたのかゴブリンの声が流暢に聞こえる。


「嫌だ、嫌だよーー助けて」


ゴブリンの一体が少女を担いだ。


『こっちは持って行かないのか?』


『助けて頂いたので置いて行きます』


『俺達はオス3匹だけで良いから、この大人のメスも持って行って良いよ』


オス、メス、匹…これで良いよな?


『そうですか…助かります』


そう言うとゴブリンは二人して大人の女性を器用に担いだ。


『またな』


『『『では』』』


なかなか礼儀正しく見える…


三人のゴブリンは俺に頭を下げ去っていった。


やはり魔物は可愛らしくコミカルな感じに見える。


アニメの世界の人間と共生している魔物かぬいぐるみみたいだ。


可愛らしい。


会えて良かった。


そう思う反面…人間に見えた魔物や魔族じゃないのが少し寂しく思えた。


「瞳様、こちらも済みましたわ」


「もうお腹一杯…」


「これだけ食べたら暫くは食べなくて大丈夫かな?」


三人の冒険者はもう『跡形も無くなっていた』


まだ時間はお昼を回った位だ。


もう少し獲物を狩っても良いかも知れない。









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