第19話 誰でも良い

「そうか、仲間をスカウトする…そういう方法もあったんだ」


「黒木の話を聞いて、詳しく話を聞いて見たらどうやら支度金も出るみたいだぜ、しかもこの世界には奴隷商まであるみたいだ、明日行ってみないか?」


俺が京子を連れ帰った事で、結構な騒ぎになっていた。


食堂ではその話で大ブレイク中だった。


普段は注目されない俺が、今日は注目されている。


自由行動の日は明日1日。


きっと明日は奴隷商はさぞ同級生で混みあうだろうな。


さてと…


「黒木君、その相手何処で見つけてきたの? その顔の傷、戦士かな」


擬態している京子はちゃんとした人間に見えている。


黒薔薇や黒牡丹の話では黒髪に黒目の女の子に頬に大きな傷があるようだ。


恐らく、俺にはこの傷が無い状態で見えているらしい。


ただ、もしかしたら、数割綺麗に見えている可能性はいとめないが。


「仲間探しに街をふらついていて声を掛けたんだよ」


「そうか…外に出て出会いを探すのも良いかもね」


「…そうだね」


京子の為に此処に留まっているが…正直気持ち悪い。


京子は余り話さず…獲物を探しキョロキョロしている。


ただ、京子の悪口を言う声も聞こえてくる。


『あの娘、元は可愛かったのかも知れないけど…傷者じゃない』


『あの顔の傷…無いわ』


『よく見ると手足にも沢山傷があるじゃない…ああはなりたくないわ』


馬鹿だな…自分達がそうならないと何で言えるんだ。


事実、京子は死んでいる。


勇者パーティは、それなりに支援があるが…冒険者や騎士になる俺達にはそこ迄の支援は見込めない筈だ。


京子が死んだのだから、此処は大国だから騎士はまだ安全かも知れないが、冒険者は充分死ぬかも知れない。


騎士だって本物の騎士は『騎士爵』があるみたいだから、もしかしたら見習いスタートかも知れない。


戦わない選択をしない限り…多分皆、怪我ぐらいはする。


ここはゲームや小説の世界じゃないんだ…


それに、その一言で…既に…死が近づいている。


悪口いった奴と言わない奴、どちらかを殺すなら『悪口』を言った奴だ。


「傷があるのは本当だから気にならないよ」


「そうだね…だけど」


「顔は覚えたから…優先だね」


「可哀そうに(笑)」


遠巻きにヒソヒソ話している割には、余り聞いてこないな。


耳を澄まして聞いていれば…『奴隷商や冒険者ギルドに顔を出す』そんな感じで話は納まっているみたいだ。


俺と京子は手を止めていた食事を再開した。


◆◆◆


「よっ、黒木、その子とパーティ組むんだ!」


「結構可愛いじゃない? 俺の好みじゃ無いけど?」


「僕は可愛くても、その傷は頂けないね…傷者…あたっ、酷いよ黒金くん」


「浅羽、お前口悪すぎだ、悪いな黒木」


なんで、勇者パーティが俺に話掛けてくるんだ?


「黒金君に白銀君に浅羽君…珍しいね!俺に声を掛けてくるなんて。何かようかな?」


「いや、白銀が黒木が同級生以外とパーティ組んだと言うから見に来ただけだ…騒がしくして悪かったね…それじゃ」


「可愛いかも知れないけど、凄い傷だね…その顔は、どうしたのかな?」


「あたいの顔の傷? 戦っていれば怪我位するだろう? 1年もすれば手足が無くなったり、顔や体に傷が出来て当たり前…恐らくこのクラスの同級生もきっと同じだね…そして3年も過ぎたら恐らくは2/3は死んでいるんじゃないか? 場合によっては全滅もあるかもね?」


「なんだって…それは…だけど俺は勇者なんだ。そう簡単には死なない」


「そう、俺は剣聖だし」


「僕は賢者だしね」


「あたいの時も勇者を含み四職は居たけど、結局は全滅したよ? 多分、あたいの代の勇者パーティが負けたからこそ…貴方達が呼ばれたのかもね!四職はこの世界で1人ずつしか存在しないからね」


「嘘だろう…勇者でも死ぬのか…」


「そんな…」


「まさか…」


「勇者パーティの待遇は桁違いでしょう? 王女や上級貴族の娘との婚約に領地に爵位…魔王さえ倒せば褒美は思うまま…違うかな?」


「確かにその通りだ」


「破格値の待遇を約束されているな」


「ああっそうだよ…」


「普通に考えて解らないのかな? 危ない仕事だから報酬が良いんだよ。ハイリスクハイリターン…そう言う事だよ。少なくとも私の知っている勇者達は…悲惨な最後を遂げているよ」


「そうか…ありがとう」


「そんな…」


「嘘だろう…」


三人は顔を真っ青にして去っていった。


そして、周りで聞いていた同級生も顔色は良くない。


◆◆◆


「さっきの話は本当なの?」


「さぁ、あくまで聞いた噂だから、あたいも良くは知らないよ…だけど、勇者は色々な国で召喚を持ち回りで行っているのは本当だし『元勇者』で貴族や王族になっている人のうわさは数える位しか聞かないから…多分…あんな物じゃないかな? 殆どがあたいの推理だよ」



だが、当たらなくても遠からず…そんな気はする。


「それで…獲物にしたい相手は見つかった?」


「特にいないよ…あたい的には誰を選んでも同じ気がするよ、明日は外出が出来るんだから、明日適当に後をつけてチャンスがあったら襲う…そんな感じで良いんじゃないかな?」


今の俺達4人なら…どうにでもなりそうだ。








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