第47話 火剣三男アグニ
ターニャ救出のため1時間走った。
盗賊団の砦が見えそうになったとき、ターニャが乗せられていると思われる馬車を発見した。砦の前で何とかしたい。
そのとき、馬車から男が1人降りてきた。
剣を1本持った男が立っている。身長180センチ越え。恐らく「火剣三兄弟」の誰かだ。
「お前がユリナで間違いないな。俺は元冒険者のアグニだ」
「邪魔よ、通して。ターニャをどうするつもり」
「人質だな」
「じゃあ、素直に付いていくから解放して」
「そりゃ無理だ」
「どうしてよ」
「ターニャって娘は、お前よりむしろ、お前と結託してる氷魔法使いシクルに対する牽制だ」
「あんな女、仲間じゃない」
「そんなことは、どうでもいい。男爵家の次男マルタから情報くらいもらってるぜ。ターニャはお前ら2人の共通の友人の妹だろ」
「だから?」
「しらばっくれるなよ。お前がターニャの護衛、シクルは俺らへの攻撃役。そういう分担のようだな」
「・・・」
「男爵家の三男が殺されたって情報が昨日入った。シクルは男爵家次男と、下手すれば当主も殺す。その後、俺達のところに来る。だから先手を打とうと思ってな」
「ふざけないで」
バキィ!
コイツ強い。
私もただ喋っているわけではない。アグニをかわして砦の方に向かおうとしているが、剣で弾かれて前に進めない。
時間がないのに・・
キラ・・キラキラ
突然、冷気が舞い始めた。
嫌いな奴だけど、いいタイミングで来てくれた。
「これは何事かしらユリナ・・」
「シクル、なんでここに?」
「他の用事を済ませたから盗賊団の偵察に来ただけ。だけど、ここに大物がいたわ。あなたアグニよね」
「おめえは氷使いのシクルだな・・」
私が来た方から突然シクルが現れ、横に立った。
「なんだ男爵家三男の次は俺狙いか?」
「情報が古いわ。すでにカスガ男爵と次男マルタもこの世にはいない。護衛でガチガチに固めてたけど、みんな氷漬けにしてあげたわ。殺ったのは今朝だけどね」
「仕事が早いな」
「まず「火剣」三男のあなたを倒すわ。まだ、それくらいの魔力は残ってる」
「ははは。すげえ冷気だぜ。だけどシクルさんよ、こんなとこで油を売っていていいのか?」
「どういうこと?」
「ターニャは、俺らが確保してるぜ。もう砦に着く頃かな」
「え?」
シクルがこっちを見たあと、再び「火剣」の方に視線を戻した。
「ユリナ、あなたを責める資格は私にはない。とにかくターニャを助けてくる。だから、あいつの足止めを頼める?」
「分かった。悔しいけど、あなたの方がターニャ救出に向いてる」
「おいおい。2人で勝手に決めるなよ。俺は早く砦に帰りたいんだ。こんだけ働いたご褒美として、ターニャの処女膜を破るのは俺ってことになってんだ。遅くなったら、兄貴達に先にやられちまうだろ。ほれっ」
ぱさっ。盗賊三男のアグニが布の塊を投げた。
見覚えがある服。下着もあったが、破られている。
「さっき、馬車の中でターニャちゃんの服はみんな剥ぎ取ったぜ。パンツを破ったあと、股開いて未使用なのも確認したぜ」
「貴様あ!」
シクルがアイスランスを火剣三男に撃ったが、三男が炎をまとった剣で相殺した。
その間に私は剣を出して三男に向かって構えた。
「・・挑発に乗らないでシクル。自分の役割を果たして」
「く、ここは頼むわ。ユリナ、あなたの役に立つものを持ってきたから使って」
何かが入った袋を寄越し、アグニを迂回して砦の方に走って行った。
「しゃーない。俺の相手はオーラゼロのユリナちゃんか。ふんっ」
「・・ぐ・・」
『超回復』
三男は4メートル先から突きを出し、剣の先端から放たれた炎で私の右肩を焼いた。
こいつは炎魔法適正Aと聞いている。中身はクズでも戦闘のエリートだ。
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