第37話 ナリスの育った村
死んだナリスのお母さんと会った。
すごく泣いてた。
モナの死を、育ての親のシスタークリスに伝えたときと同じ。
ナリスの死を悲しんでた。
ナリスのお父さん、弟のダン君とも会った。2人も、辛そうだった。
小さな村社会で「無能」の烙印を押されたナリス。
自分から家を出たが、それは愛する家族のため。
離れたけれど、家族にも愛されていたようだ。
◆◆
さて困った。
村の廃屋を借りて、しばらく滞在させてもらう。
そこは、いい。
収納指輪に入れている300万ゴールド。これをナリスの両親に、渡しにくくなった。
「ナリスの遺品」として、彼女が貯めていたものだと言うつもりだった。
すでに、もう1人のユリナ、すなわち私の偽物が先に200万ゴールドを渡している。
遺品、の目録で被ってしまう。
墓前のお供えにしても、額がでかすぎ。
思案していると、ターニャに話しかけられた。
「ところでユリナさんは、なんで滝の近くで寝ていたんですか?」
「水の中にダンジョンを見つけて潜ったんだ。中休みしてたの」
「まさか、滝の流れの中に入り口がある、ドラゴンダンジョンですか?」
「うん。さっきも言ったけど、ギリギリで「気功術」が発現したの。その技を使って、4階まで降りたわ」
「え、それって本当ですよね・・」
「まじかよ・・」
ナリスの家族が驚いている。
収納指輪から鱗を剥いだドラゴンパピー、4属性を1匹ずつ出した。
また驚かれた。
ナリスのお父さんによると、ダンジョン自体は発見されていた。
しかし、滝壺近くの急流の中に入り口があるため、侵入が困難。
辿り着けても、中にいる高レベルのドラゴンパピーに攻撃されて、前に進めない。
肉も素材も価値がある。だけど入手が難しい。
そのため放置されていたそうだ。
確かに私も、普通なら死亡回数が軽く3桁に到達している計算だ。
そこで、閃いた。
ターニャちゃん達に仕事をしてもらう。
村の女性、成人前の若者を20人ほど集めた。
村の人は狩猟のための弓や矢じり自分で作る。弦を作るのも慣れている。
だから、ドラゴンパピー4属性、小型ランドドラゴン、各30匹でアイテム作りを頼んだ。
鱗剥ぎ、皮を使った革ひも作りだ。
対価をお金で払うつもりだったが、ドラゴンパピーの肉を希望された。
焼いてもうまい。
良質の干し肉を作れて、保存食と交易品の両面で役立つそうだ。
ドラゴンパピーの肉、爪、牙をあげる。
肉はランドドラゴンの肉だけ引き取った。
「等価交換」の材料に利用するためなんで、味は関係ない。
ナリスのお父さんには、作業に対して報酬が大きすぎると言われた。
人がいい。
街に持っていって売れば肉だけで1000万ゴールドは下らない。プラスして牙や爪まである。
でも、助けられなかったナリスへの罪ほろぼしと思い、受け取ってもらうことにした。
◆
話は変わるが私は「偽ユリナ」に会いたい。
心当たりはないけど、私の代わりに大金をナリスの家族に渡すような人間だ。
ターニャも会えるのを楽しみにしているそうだ。
私も興味がある。
革ひもの依頼や村人との交流で2日過ごしたが、まだ10日以上の時間がある。それまで村で過ごすことに決めた。
「等価交換」の材料とオリジナル武器のヒントを探しに南の森の中に行こうとしたら、ターニャから待ったがかかった。
「ユリナさん南はトレントが出るから危険です。それに最近、ずっと南の盗賊団の奴らが、この村の近くにも現れるんです。1人はダメですよ」
「盗賊か・・。遭遇したことがないね」
私は強いだけなら小型ドラゴンにも勝てたが、知恵がある人間は苦手だ。
それでもナリス達の仇を取るには、少なくとも4人の戦闘経験豊富な魔法使いを倒さなければならない。
せめてナイフと「流星錘」を人並み以上に使いこなせるようになりたい。
盗賊が出ることも期待して、あえて南の森に行くことにした。
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