試合決定
――小幡と大迫が延々と冷戦を続ける中、唐突に試合が決まった。
ジムの会長が、即断即決で小幡の試合を決めた。小幡のスパーリングは大迫以外の関係者では評判になっていた。
考えてみれば小幡は元天才ボクシング少年として有名だった。炎上動画事件こそあったものの、自爆しないで真面目にキャリアを積み重ねれば世界チャンピオンだって夢ではない素材だ。
大迫にひどく冷遇されていたとはいえ、強豪選手を多数輩出してきた会長の目から小幡を隠しきるのは難しかった。
小幡が8回戦ボクサー相手に一方的な攻撃を仕掛けているのを見て、会長はすぐにプロモーターに電話した。相手は未定だが、すぐに試合の日程が決まった。
大迫は自分を通さずに試合が決定された事に対して、はらわたが煮えくり返る思いだったに違いない。だが、会長の一存で決めた試合を部下の大迫が無効には出来ない。それはボスに弓を引くのと同じ事だからだ。
相手はそれなりの強豪選手を用意するという。前回、前々回と大迫へ当てつけのように塩試合を繰り返した小幡は、思わぬチャンスを得る事となった。
試合が決まった瞬間、大迫は世界で一番まずい苦虫を噛み潰したように顔をしかめた。塩漬けにしてそのまま葬ろうとしていたミイラが急に復活したようなものだから、そのような反応が起こるのも仕方がない。
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