器用貧乏 その2
大学の推薦は無くなった。少なくとも大学リーグ戦の上位校に呼ばれるほどの実績は作れなかった。アマチュアのトップどころには高校王者がゴロゴロいる。
求められていなくても、小幡ロキにはボクシングしか無かった。
無冠のくせに実力者である事は一部の人間から知られていたので、スパーリングで小遣い稼ぎをした。時給を考えるとそれなりにいい金にはなったが、生活するにはあまりにも厳しい金額だった。
殴られ屋を始めた。調子に乗った不良もどきの社会人を倒したら訴訟すると騒がれた。お友達を使って黙らせた。
仕方ないのでスマホで簡単に探せるバイトを探した。どう見ても振り込め詐欺の受け子でしかない求人。応募しようとしたところで父親に止められた。
小幡ロキは家族にとって厄介者になっていた。
小学生時代に炎上動画事件を起こして以来、家族の警戒心は強まっている。兄はアマチュアボクシングでオリンピックを目指すレベルに達している。
小幡家に「バカな弟がいる」というのは有名な話だった。競技の特性上特殊な家庭環境の選手が多い世界だったが、まさか身内の人間が自分のせいでそう評価されるなどとは夢にも思っていなかった。
小幡はだんだん
不遇もパッとしない実績も自分のせいだったが、心のどこかではそれを認める事が出来なかった。誰でも自分がクズだと認める事は難しい。
しだいに家族には言わず、また動画を配信しはじめた。目立ちたがりというよりは、暇でろくでもない考えがこじれただけだった。
もうスーパー小学生ネタは使えない。今はボクシングが巧いだけのクズでしかないのだから。よほど優れた芸当でも流さない限り見向きもされない。入れ替わりの早いネット社会で、小幡は完全に過去の人となっていた。
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