台風一過
夜明けごろからごうごうと凄まじい風の音が始まったかと思うと、ほどなくしてばらばらと大粒の雨が屋根を叩きつける音がやって来た。木々の梢が引き千切れそうなほど揺さぶられるざわざわという音、横殴りの雨が窓に叩きつけられるびりびりという音……
音の洪水の中、律は昨日クラスメイト達と約束した通り、午前中はPCでゲームに興じることになったのだが……
「何が何だかサッパリわからない......」
『律そこ!!回り込め!!』
「え……えっと……」
『ボヤボヤすんな!!死ぬぞ!!』
律は複数プレイが可能なサバイバルゲームのようなものに誘われたのだが、いかんせんアクションゲームどころかこういったゲームそのものがほとんど初めてだ。せいぜいがスマホで無料で出来るパズルくらいしかしたことがない。何をどうすれば良いのかさっぱりわからず、ただ右往左往するばかりだ。
(ツムゲーならなんとかなるのに……)
パンパンと銃声らしきものが響く中、わけがわからず途方に暮れている間にキャラクターは殺されてしまったらしい。
『もう……律のせいで負けたじゃないか!!』
「ごめん……」
スピーカーから聞こえる苛立ちを露わにした声に、情けない気持ちになりながら謝る。そもそも律は争いごとが苦手だ。ゲームの中であっても殺し合いなどしたくない。
『何言ってんだ。やったことないって断ってるのに強引に誘っておいてそれはないだろ?律がこういうゲーム向いてないのは見てればわかるのに』
呆れたような甲斐の声。刺々しい声の主をたしなめてくれた。
『俺も正直こういうの苦手だしさ、今度あつもりみたいな、まったりできるのやろうな』
『いいね、次あつもりしよう、あつもり』
幸いなことに別のゲームに話題が移ってくれた。いつの間にか雨の音はぴたりとやんでおり、今はびょうびょうと強い風が竹林を吹き抜ける音だけになっている。
「あ、そろそろ学校……」
『ほんとだ、支度しないと。じゃ、あとでまた』
『ちえ~、一日休校になればいいのに』
ちょうど登校の支度をする時間になったので、ゲームはお開きになった。
(ふぅ、疲れた……いきなり慣れない事をしてもすぐにはうまくいかないものだな)
初めてのゲーム、初めての複数プレイで朝っぱらからだいぶ神経がすり減った気がするが、何とか乗り切れた。
人付き合いも、懲りずに少しずつ慣れていくようにしなければ。
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