(四)-2(了)
しかしもちろん、それらのシグナルは直美には届いていない。
直美の歩む足が白線を越える。一歩目、そして二歩目。三歩目を踏み出そうとしたとき、列車の警笛がホームに鳴り響いた。スーツ姿の老若男女が一斉に八王子方面の線路を見た。前照灯を付けたオレンジ色の帯の通勤特快列車が警笛とブレーキ音の両方を最大級に響かせながらホームに近づいてきた。
そして直美の三歩目がホームの上ではなく、空中を踏み抜いた。
直後、ホーム上では列車の金切り声に、通勤客の悲鳴が加わった。
(了)
よいこのめばえ 【い-14】文学フリマ京都_筑紫榛名 @HarunaTsukushi
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