(二)-20
しかし、このときの激しい口ぶりは、誠の想像を遙かに超えていた。けたたましい悲鳴のような叫び声と、マシンガンのようにその口から発射される棘のあるというより鋭い刃のような言葉が、まるで空を埋め尽くし強く降る豪雨のごとく、誠の五感へ無慈悲に襲いかかったのである。
そんな怒濤のような圧倒的な拒否と攻撃と非難の一方的な嵐に、誠の心はひとたまりもなく一分ともたずに爆沈した。
海老津誠はもともと元引きこもりだったこともあり、心根は優しかったものの、オラオラ系の人間や強い物言いの人間との付き合いは不慣れであった。その娘である直美は毎日接してはいたが、そんな母の態度にはいつもスルーすることしかできなかった。だからこそ誠と直美の二人は気が合う者同士であったのだ。
そして誠の心は広くて優しいことに違いはなかったが、悪意のある人間を受け入れるには脆すぎた。
この日以後、誠はアルバイト先で直美を避けるようになってしまった。直美が誠をデートに誘っても、彼は「ごめん」と断るようになってしまった。
(続く)
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